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7.33点(レビュー数:6人)

作者いくえみ綾

巻数13巻 (完結)

連載誌Cookie:2004年~ / 集英社

更新時刻 2009-11-25 06:40:06

あらすじ 由麻は通学電車で痴漢に悩まされている。由麻に好意を抱く同級生の諏訪は由麻を守るため一緒に通学し、そのまま流れで2人は付き合い始めることに。だが、由麻は毎朝同じ電車に乗る生物教師の梶間が妙に気になって…。
登場人物それぞれの成長と日々の恋愛模様を、数話完結のオムニバス形式で描いた作品。
 

備考 最終巻には番外編「切切と」も収録。
2009年、第33回講談社漫画賞少女部門受賞。
 

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この漫画のレビュー

6点 booさん

同作者のバラ色の明日に興味があったのと、とろっちさんのレビューが熱かったので読んでみた作品。

代替のない大切な人を失った時、それを埋めるのは時間と他の誰かとの絆しかない。
再びカンナの時が動き出すまでの物語。

要はトラウマを乗り越えるまでの話だ。携帯小説から漫画まであらゆるメディアでやりつくされている題材なのに、他と一線を画すのは確か。

いくえみ先生の物語のつづり方は非常に丁寧で好感が持てる。
時はゆるやかに、穏やかに進む。
カンナが主軸とはいっても、群像劇がカンナに纏まっていくというだけで当人にとってはやはり自分が主役なのだ。

話は常に一人称で語られる。少女漫画らしい独りよがりで自己完結的な物語(悪口じゃないよ)。
ただ、ここで群像劇というのが効いてくる。独りよがりもたくさん集まれば独りよがりではなくなってしまう。狙っての工夫かどうか分からないけど、おもしろい。

トラウマを描く作品としては古谷実作品のこちらの世界を侵食してくるような生々しさはなく、日常を描く作品としてもくらもちふさこ作品の境界をいつの間にか踏み越えてくるようなリアリティの追求と妄想は存在しない。
潔く柔くは良くも悪くも読み物の域を超えてはいない。軽く読めることはそれはそれで良いことだし、その独りよがりさも作品に乗れてしまえば最高に没入できるのだから悪くはないと思う。
軽く読めるにも関わらず、その独りよがりさは人を選ぶ。これまたおもしろい。

長々と書いておいて何だけど、結局私はこの作品を好きになれない。というのも登場人物にあまり興味が持てないから。興味がないというのはある意味嫌いより悪いかもしれない。
いくえみ先生の描くいい男はほぼ全員一緒に思えるのと、その男どもを全く魅力的に感じない。別に作者が女性だからとかではなくて単純に相性の問題。三千花の話に代表されるような軽薄さと変な爽やかさのせいか違う世界の生物のように感じたことがしばしば。
お前らの頭には恋愛しかないのか?って程、ほぼ最初から最後まで恋愛の話のみだったのも要因の一つだろうか。
この作品で描かれているのは少なくとも私が共感できる日常ではなかった。

要約すると、こういう一人称の心理描写に特化した作品は登場人物に共感できないと無理ってこと。外伝の「切切と」が一番好きだった辺りから私の好みがうかがえるなぁと自分で思う。惹かれた人物もいたにはいたけど少数だったので。
思えばくらもちふさこファンの私としてはこの手の作品のハードルが高い上に、いくえみ綾というペンネームがくらもち作品由来と知っていたので無意識に比べてしまった部分があるかもしれない。そういう意味では残念。

おもしろいというか色々と興味深かった漫画。はまればバイブルになりうるとは思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-06 03:25:10] [修正:2011-09-07 15:04:43]

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