ホーム > 少年漫画 > 週刊少年ジャンプ > はだしのゲン

6.55点(レビュー数:27人)

作者中沢啓治

巻数10巻 (完結)

連載誌週刊少年ジャンプ:1973年~ / 汐文社

更新時刻 2012-02-19 21:27:52

あらすじ 原爆で家族を失った主人公・中岡元が、戦後の焼け野原となった広島でたくましく生きる姿を描く。

備考 「週刊少年ジャンプ」で連載開始され、1975年に「市民」に移籍。「市民」の休刊に伴い「文化評論」「教育評論」と掲載誌を移した。

シェア
Check

この漫画のレビュー

8点 臼井健士さん

戦争をテーマにした漫画というのは題材として「悪い評価」は付きにくいものではないかなとも思うのだが、これはその中でも広島に落とされた「原子爆弾」にテーマを絞って描かれている点で他作品とは意味合いが異なり、そしてそれこそが正に「世界唯一の核兵器の被爆国」である日本が生み出すに最も相応しい漫画ではないだろうかと思う。

大抵の小・中学校の図書室には常備されているが、内容は「悲惨な描写」が紙面上のこととは思えないようなリアルさを浮き彫りにする。主人公の少年は原爆投下時にたまたま壁に遮られていたために熱線と爆風の直撃を受けずに済むという幸運で命が助かるも、そこは「真の地獄」への入り口でしかなかった。
爆風と熱線の直撃を受けながらも即死出来なかった人々は、焼け爛れた皮膚をボロ布のように引きずりながら水を求めて街中に溢れ、さながら「バイオハザード」のゾンビの群れと化した。街は一瞬にして廃墟となり、やっとのことで自宅に戻った主人公も、たまたま外に出ていた母親以外の家の下敷きとなった父・姉・弟の3人を火事で失う。混乱の最中に妊娠中の母親が妹を出産・・・・と息を付く間もないほどに次々とドラマが巻き起こり、さながら読者も主人公とともに「嵐の波間に漂う小舟」のごとく巨大な力に翻弄されるのだ。

特筆すべきは勿論、これらの出来事が全て虚構の主人公・登場人物を配置しながらも否定することの出来ない現実であるということだ。それは単なる「虚構の中の冒険物語」で味わう悲惨さなどとは完全に一線を画した全くの別物であり、今も現実を生きる体験者にとっては忌まわしい過去を眼前に「向き合え」と突きつけるに等しく、その悲惨さを体験し得ぬ世代には呪縛にも似た恐怖を脳裏に刷り込むことで「平和へのメッセージ」を未来永劫、人類の歴史ある限り発信し続けることだろう。

悲惨な描写の前半から、戦争が終わり復興する広島を描いた後半では原爆の亡霊とも言うべき「放射能による障害」の恐怖と、そして本来は同じ原爆の被害者であるはずの者たちによる「利を貪っての醜い争い」がテーマになっていく。ムスビやカッチンはこれらの犠牲者と言っていい。

たった一発の爆弾はかくも多くの人々の運命を変え、人類の歴史を変え、そして地球の未来すらも変えたのだというお話。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-07-03 09:06:13] [修正:2012-01-03 09:41:08]

はだしのゲンと同じ作者の漫画

該当なし

中沢啓治の情報をもっと見る

同年代の漫画

週刊少年ジャンプの情報をもっと見る