うしおととら
作者:藤田和日郎
雑誌:週刊少年サンデー
レビュー全文
10点
:森エンテスさん
少年マンガの教科書。
この作品を読んで感動できない人とは友達になれないと口に出しても良いくらいの名作です。
残酷な描写もありますし、救いのない展開もありますけど、こういう作品こそ中高生は読んで欲しいと思います。
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以下facebookに投稿した内容を追記しました(2015-2-6)
マンガ『うしおととら』がTVアニメになるというニュースがありました。
OVA(オリジナルビデオアニメ)では販売をしていた作品ですが、この度一から製作をしなおして、TVで放送されるこの作品は、ある時期の少年サンデーの看板作品でした。
内容は少年漫画の王道とも言える内容で、ある日、主人公の少年が1匹の妖怪と出会い、その妖怪と共に旅をする中で色々な経験をし、仲間を増やし、最終的には最強の妖怪を退治するというものです。
ここから先は、ネタばれになりますので、これからアニメを楽しまれる方は読まない方がいいのではないかと思います。
この作品のアニメ化のニュースを目にした時に物語を思い返してみたんですけど、ちょうど時期的にISILが(現在もそうですけど)世間の注目を浴びていたので、この作品の最後の妖怪とISILは「似ているな」と思いました。
この妖怪は人の憎しみから生まれ、恐怖を食べて生きている妖怪なのですが、現在のISILにもそのような所があるように思います。
主人公はお寺の子供なのですが、学校の同級生、同じ宗派の仲間達、外国の研究者、思い半ばで無くなった人達の霊、日本全国にいる土地神、そして妖怪達、彼らは最初は敵対をしていた存在達でしたが、最終的に協力をして最後の妖怪と対決し、退治をします。
この形も連合軍によるISILへの対応と似ているのかなと思っているのですが、ここで大事なことは立場も正義も違う人達が一つの巨悪に対して立ち向かって行き、彼らの内のどれが欠けても、最後の妖怪を倒せなかったであろうことです。
そして、この作品の最も素晴らしいところでもあるのですが、彼らがそれぞれがバラバラに最後の妖怪に戦いを挑み蹴散らされ、主人公が憎しみで相手を打ち負かそうとして蹴散らされ、協力してようやく退治ができるというところです。
ISILに対しても、色んな国や宗教、民族の垣根を越えて協力して対応して欲しいと思います。
ちなみにこの最後の妖怪なのですが、先述にあるように憎しみから生まれ、人の恐怖を食らって生きている妖怪ですので、生き物として人を殺し、恐怖をさせることしか出来ません。
しかし、その妖怪にスポットを当てると、主人公に倒され消滅する間際に、本当に自分がなりたかったものは、憎しみや慟哭から生まれた存在ではなく、純粋無垢な存在として生まれたかったという事を暗示させる描写があります。
ISILも同じだと思います。
彼らの現在の存在は憎しみと恐怖を撒き散らしている存在ですけど、最初からそうなりたいと思っていたわけもなく、様々な憎しみの連鎖から現在の形になっているのではないでしょうか。
そういう意味では同情すべき部分が0ではないとは言えますが、この作中で作者はこの妖怪の「悪の心だけを倒し、無垢な存在が残った」という形にはせず、跡形もなく消滅させています。
「憎しみと恐怖でしか存在意義を見出せなくなった存在は一度は完全に消滅させるしかない」という作者の考えがそこにはあるように思います。
主人公はこの妖怪を倒すときには憎しみでは無く、慈悲・慈愛・感謝の心を持って消滅をさせます。
憎しみを持って戦っては勝てなかった相手に対して、慈悲・慈愛・感謝の心を持って戦い、打ち倒し、消滅させることが出来たわけで、これこそが連合国軍がISILに対しての戦い方として正しい形なのではないかと思いました。
憎しみを持ち壊滅させても、憎しみや悪意の種は地中に残ります。
非常に難しい事であり、綺麗事だとは思いますが、『憎しみではなく、慈悲・慈愛・感謝の心を持ち、跡形も残さず消滅させる』ISILの結末も、この作品同様の終わりを迎えて欲しいと思います。
最後に、『うしおととら』というタイトルですが、人間側の主人公である潮と妖怪側の主人公とら、1人と1匹の主人公達の名前です、シンプルですけど、わかりやすく素晴らしいタイトルだと思います。
[ 2010-10-15 18:47:58]
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