神童
作者:さそうあきら
雑誌:漫画アクション
レビュー全文
7点
:為亀さん
世界の全てをまず音で把握するからこそ、ピアノから様々な世界をそのまま表すことができる。
うたにとって世界はまずなによりも音であり。口よりもピアノを使った方が語りやすかったのかもしれません。
神童に特別なのはその世界観だ。という作者の神童観(天才観)はかなり僕好みで、うたの天才さには強い説得力を感じました。
奏でられた世界をそのまま映したような演奏シーンも秀逸で、絵による表現はピアノの言葉を僕等にもわかるように翻訳してくれたものなのかも。
惜しまれるのは野球編の時代を感じさせる演出の過剰さと話のトリックの単純さですね。しかしそれを補って余りあるものをもった作品だと思います。
僕の評価基準では7点までしかあげられませんが、一般には8点をつけても全然おかしくない作品でしょうね。
追記.2008.11.07
見逃せない要素を再発見したので追記です。
全体で’音’と’音楽’に関する考察が深まっていく構造なのではないかと。
具体的に、一巻ではうたの音で世界を観る世界観と、ピアノで世界を語る表現力を伝える。
そして和音が音大に入学してからは「自分もピアノの一部になりたい」という和音の言葉が発展して、うたの「存在その物が音楽」につながっていく。もう一方で和音の「音の厚みや空気感まではテープじゃわかんない」という発言がうたの「今この瞬間の音楽」として現れる。
ここでうたが失聴して’音楽’に向かっていたテーマが再び’音’に戻ってきて、うたは一巻時点で持っていた音を感じることを取り戻し、世界を感じることを取り戻し、そしてピアノで世界を表現することを取り戻しす。そこでやっとラストの演奏をする。という作りなんではないかと。
もう一つおもしろいのは、中盤以降、和音の発言はよくうたの音楽観を育てるキッカケになっているんだけど、和音自身はそのあとのうたの音楽観に感心はするものの追従していってる描写がない。というところ。
彼は彼なりの新しい音楽観を発展させていくのではないか。という意味でもいい終わり方ですね。
[ 2008-10-04 00:26:48]
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