海の天辺
作者:くらもちふさこ
雑誌:別冊マーガレット
レビュー全文
6点
:booさん
くらもちふさこが描く教師と教え子の恋愛もの。
最近少女漫画もそこそこ読むようになったとはいえ、この手のまっとう恋愛ものを読む気にはなかなかなれない。好きな作家であるくらもちふさこだからこそ手にとってみた。
今のくらもちふさこからは想像できないくらい甘ったるい設定、物語。教師と教え子のラブストーリーなんてそりゃそうなるわけだけど。
天コケ以降のくらもち作品の特徴である重層的な構成の妙は特に見られなくて、本当に王道な作品に仕上がっている。そして私は漫画に限らず、そんな王道恋愛ものは途中で読むのをやめてしまうことが多い。気恥ずかしくて耐えられないのだ。でもこの海の天辺に関してはどうにかこうにか楽しんで読むことが出来た。
それはやはりくらもち作品のリアリティ。
何の気もなしにたちの悪いことを仕出かすやつがいたり、授業やクラスの雰囲気だったり、ちょっと他の漫画とは違う現実味のある空気が流れている。結局私が見れない恋愛ものというのはファンタジー的な感じが駄目だったのかなとは海の天辺を見て思ったこと。
先生と教え子の恋愛もの、まるでフィクションのような設定にリアリティを与えるのはくらもちふさこの手腕だろう。ありきたり、ではなくそういうドラマなのだ。
しかし現実味という点で、教師達の駄目さが本当にいそうで困った。まともなのは山崎先生くらいかな?と思ったが人間的にはともかく、教師としては山崎先生もどうなんだろうね。
人魚姫がモチーフとされていることからも分かるように初恋をひたすら追い続ける少女の物語となっている。
正直王子さま役であろう先生をあまり好きになれず。だってねぇ、作中でも再三言われるけどさ、どう考えても軽い女たらしだもん。気遣いなりから気持ちは分かるけれども、男目線だと遠藤君の方が…。
そんなこんなわくわくしながら何だかんだと楽しんだ。起承転結がお上手。最後の展開に驚かされ、何より締めがすごく巧い。
これでいいのか?との疑問がラストの台詞で氷解してすっきりと読み終えた。この疑問はくらもちふさこの疑問でもあったのかもしれない。
これが純粋に甘ったるい最後のくらもち作品かな。そういう意味では海の天辺が読者の一つの転換点ともなりうる。
ただ作中のリアリティだったり、キョーチの存在あたりは後の作品につながりを感じるので興味深い部分も多かった。
わりかし王道な恋愛ものが苦手な人でも試しに読んでみると新たな発見があるかも。意外にいけるもんだね、と思ったり。
[ 2011-11-04 22:51:27]
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