藤子・F・不二雄 異色短編集
作者:藤子・F・不二雄
雑誌:短編集
レビュー全文
9点
:北海流双さん
私は子供の頃から藤子不二雄さん(当時解散前)の漫画が好きだったんですが、中高生位の時分にこれを読んで強い衝撃を受けました。今、大人になって読み返してもこれが30‐40年前の作品とは思わせない普遍性があります。
ホロッとするような心暖まる作品もあるのですが、全般的に風刺、皮肉の効いたものが多く、それがあのドラえもん等の少年マンガと同じキチッした端正な画風で描かれているのですから、この短編集を初めて読むとイメージのギャップは大きいかもしれません。(今になって思えばドラえもん等の少年マンガにも端々に黒い片鱗は見えますが・・・)
作者は「良い意味で」常識にとらわれないフラットな心を持った方なんだな、という感想を強く持てる作品集です。意地悪に言うと、乾いた観察者の視点とも取れるかもしれません。
しかし、社会の常識やモラルを所与の条件として当たり前の物とせず、客観的に公平な視点で見つめられる力と、それを商業誌に娯楽として、物語の中に落し込める豊富な引き出しがあるからこそ、このような作品を産み出せるのだと思います。
作品の舞台はありふれた日常の生活から中生代、古代中近東、未来の宇宙空間、パラレルワールドと様々ですが、書きたいテーマに合わせて話の舞台を決めているといった印象で、本人談でSFを(S)少し(F)不思議と表現しているように、SFには何も大がかりな設定や壮大なテーマは必ずしも必要無く、一捻りの想像力が重要なんだと教えて下さる教科書のような一品です。
と、ベタ褒めしておりますが、この異色短編集は作品の選択が個人的にはちょっと微妙なので、単行本の評価としては1点減点しておきます。同じ小学館ならPerfect版か、若しくは中央公論社のSF全短編(絶版?)がお勧めです。
[ 2010-05-04 23:34:50]
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