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ネオ・ファウスト
作者:手塚治虫

雑誌:朝日ジャーナル

 レビュー全文  

7点  :朔太さん 

天才手塚の生涯をとらえて離さなかった、文字通りライフワークとしての
テーマが、「火の鳥」とは別に「ファウスト」であったことを
最近になって知った。

1950年ファウストを出した手塚は22歳、学生の身である。
ゲーテとの出会いにより強いインスパイアを受けたであろう学生手塚の
心に完全燃焼できない自分を見出したのではないか。
21年後、百物語という日本の戦国時代を背景にした和製ファウストを
再生させるに至るのが、その証左である。
それからさらに17年後の1988年、熟成された思いをネオ・ファウスト
という長編で集大成として決着をつけようとしたのではないか。
しかし、1989年に断筆するに至り、構想は夢の途中となった。

火の鳥にも共通するが、ネオ・ファウストについても、手塚は果たして
完成させるつもりがあっただろうか?
いつまで行っても人間とは、時間とは、宇宙とは発散し続けるものであり、
また輪廻転生によりくだらなくも永遠に繰り返し営みを継続していく
ものと言わんばかりである。
とはいえ、その中で小さく花咲く人間ドラマはなんと可愛らしくもあり、
ひ弱くも悲しい。

現代の漫画は相当エンターテイメントに優れ、起承転結と意外性に富み
素晴らしい発展を遂げたが、一方で淡々と流れていく手塚ドラマを
見ていると、そんな感慨を持ってしまう。

[ 2016-06-20 05:43:05]
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