とめはねっ!鈴里高校書道部
作者:河合克敏
雑誌:ビッグコミックスピリッツ
レビュー全文
8点
:鋼鉄くらげさん
<はじめに>
とりあえず今回は色々書きたいことがあったので、いくつかのテーマに文章を分けました。
正直なところ、このタイミングで終わるとは全く思っていなかったで、実はかなり驚いています。しかし、よくよく読み返してみると、10巻あたりからもう既に物語を畳む雰囲気が、そこかしこから醸し出されていたのを考えると、このタイミングでの幕引きは必然であり、むしろ当然だったのかなとも思います。
<ストーリーについて>
得点は8点。9点ではなく8点。この点数評価は偏に「ストーリー」の物足りなさから由来しているものです。「帯をギュッとね!」と「モンキーターン」。前の二作ではきちんとストーリーをある一定のピークのところまで持って行って話を終わらせましたが、この作品は○○○(ネタバレ防止のために伏せました。○の数も合っていません)と、ひどく中途半端なところで終わっています。ここから先は色々と邪推してしまいますが、自分の考えをまとめると要するに、雑誌異動とか色々あって「作品そのものを無事に完結させられるかどうか不安になったため、ある一定のところで物語に区切りを付けたんじゃないか」というのが自分の予想です。
だから合宿の話が異様に長く、また新入生もこれ以上入ってこないし、他校の新しいライバルなど新キャラも登場しない。話をまとめ上げられなくなるから。そんな事情でこのタイミングで物語を完結させたのではないかと思います。まぁ、ただの推測になってしまいますが。
そんな訳で面白くなかったのではなく、物足りなかった。その表現が一番しっくりくる気がします。
<「書道」とは何か>
最終巻の巻末コメントで作者は「自分は字が上手くなかった」と述べていますが、私もそれと同様で、昔から字が下手で習字の時間が苦痛でした。「しんにょうのはらい」の形がどうとかそんな細かいことを指摘しないでほしいとか、見本通りにきちんと正確に書きなさいとか言う割には、世の中の良書と呼ばれる作品群が読めないものばかりなのは何だか納得いかないとか、そういった考えを持っていたので、正直「書道」は自分にとって理不尽な世界そのものでした。
しかし、この作品を読んで改めて「書道」というのはどういうものだったのかを考えてみるとやはり「自身の内面を表現するための手段の一つ」であり、茶道や剣道、柔道などと同じく「道」を追求する分野の一つだったんじゃないかと思います。もちろん、当時小学生だった自分にはそんなこと思いもしませんでしたが。古典や漢文と同じく、ある程度年齢を重ねてからその世界に踏み入れてみると、また違った側面が見えてくる。そんなことを学んだ良い機会でした。
<結び>
作品全体の感想をまとめると、ストーリー漫画としては不完全燃焼でしたが、書道漫画としてはこの上ない良作でした。
最後に、この作品の第13巻176・177ページに掲載されている
井上有一 作 「噫横川国民学校」
の書は、日本人ならぜひ一度は見て欲しい書です。
ただ、心して見てください。
「書」ではなく、身も心も引き裂くような魂の慟哭。
悲しくも激しい表現者の姿がそこにはありました。
[ 2015-05-30 23:48:26]
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