ブラック・ジャック
作者:手塚治虫
雑誌:週刊少年チャンピオン
レビュー全文
10点
:十歩神拳さん
この作品が名作と呼ばれる理由として、漫画史的な価値やクオリティ、重厚なメッセージ性などは勿論、キャラクターのリアルな存在感が挙げられると思います。
例えば主人公であるブラック・ジャックには紙の上の人物とは思えない深みがあります。
彼の理念には作中通して一貫性があり、さらに彼の心理描写は非常に繊細に描かれているため、多くの読者は自分の中でのブラック・ジャックというキャラクター像をまるで知り合いのようにはっきりと確立しているはずです。
ところが、作中に登場する多くのキャラクターは彼の内面を知る機会などないので、彼の言動に不快感をあらわにする場面が目立ちます。
ここまで表面上と内面で相手に与える印象が異なる2次元のキャラクターというのもそうはいないでしょう。
またブラック・ジャックは、彼を深く理解していると思っている読者すら予想だにしない言動をとる場合もあります。なぜなら彼は非常に気まぐれ屋さんだからです。このイレギュラーな思考が、さらに彼の存在にリアルさを与えているように思えます。
240話以上のエピソードを重ねても、その片鱗しか掴めないほど彼の心は奥深く、未だ解明されていません。だからこそ漫画の登場人物という枠組みを超えた存在感を放ち続けているのでしょう。
そして、記憶に残る「名言」が多い本作ですが、そんな彼が放つからこそ、彼の言葉は読者の心の奥底まで響くのだと思います。
ここではブラック・ジャックについて語らせてもらいましたが、ピノコやドクター・キリコをはじめとする多くの骨太な登場人物からもまた、確かな存在感を感じます。
多くの読者がブラック・ジャックをはじめとする魅力的な登場人物に魅せられた、これが連載終了から20年以上たった今でもこの作品が多くの人に愛される一番の理由ではないでしょうか。
[ 2009-12-24 12:12:24]
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