夕凪の街 桜の国
作者:こうの史代
雑誌:漫画アクション
レビュー全文
5点
:とんすけさん
難しい。桜の花びらで埋め尽くされたような美しい池にこの点数を放り込むのは実は気がひける。
でも自分の中にある、ある抵抗感がどうしてもいい点数を与えてくれない。
まず、絵。コミックとは絵とストーリーで両輪だが、今の時代にこの絵は辛かった。ストーリーとのマッチングを考えれば問題ないのだが。あと、桜の国、で、ふらり買い物にでた父親がそのまま長距離バスでヒロシマにでて泊まるといういきさつについて家族が大騒ぎにもならない非常識さが日常漫画としては大きな穴に見える。
なにより、「死んでしまえと誰かに思われた傷」がどうしても納得いかず誰もそれに目を向けようとせず語らないヒロシマの人の悲劇。それはわかる。自分たちがもってしまった差別感へのくやしさもわかる、つもりだ。でも、当時、意地悪く言わせて貰えば、日本もアメリカも戦争に参加している国々は皆、どこかの国の顔も知らない誰かに対し間接的に「死んでしまえ」という姿勢でいたはずなのだ。それを、「信じられない事、向けいれられない事」として描くという姿勢に、ある種の抵抗を感じずにはいられなかった。自分の国の兵隊を、勝ってきてくれと旗を振った時点でみなが間接的に加害者であった、それがすべての国にとっての戦争であったと思うから。
[ 2006-10-15 19:10:19]
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