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不安の立像
作者:諸星大二郎

雑誌:短編集

 レビュー全文  

7点  :まれらさん 

最初期から10年間程度の範囲の短編集。作者自身が後書きで語るようにホラー中心になっている。同じホラーでも絶叫する類ではなく、背筋がぞくりとするようなものが多い。以下寸評。
「不安の立像」日常に潜む実体のない恐怖を描く。デビュー間もない頃の作(デビュー作との表記もあり)でありながら、既に完全な諸星ワールドを形成している。(6点)
「子供の遊び」謎の生き物が実に猟奇的で、おぞましい姿なのに見入ってしまう。同様のモチーフはその後の作品の中に繰り返し登場する。結末も秀逸。(7点)
「復讐クラブ」シニカルな小品だが、毒の利いたオチがいい。(5点)
「海の中」穏やかな詩情漂う作品。こう描けばいかにも美しい話のようであるが、その実は水死体のモノローグというところが異様。(5点)
「ユニコーン狩り」作者は照れているが、きわめて真っ向から夢と向き合ったファンタジー作品。すべての作品の中で最もポジティブな作かも知れない。『今年はじめて見る一角獣』のフレーズが実に美しい。思春期の不安定な精神状態を直撃すれば、人生が変わるかも知れない。子供の頃に読みたかった。(9点)
「真夜中のプシケー」比較的正当なホラー漫画。装丁(表紙)のモチーフにもなっているようで、基調となる位置づけかも知れない。(6点)
「袋の中」猟奇的な作品であり、殺人や屍姦など何でもありなのだが、それ以上に人間の心理描写の方が怖い。(6点)
「会社の幽霊」近代社会の脆さや組織の異常さを描きながらも、妙に戯画的なドタバタに帰着するところが可笑しい。ブラックユーモアの味わい。(5点)
「子供の王国」頽廃的な味わいの中に奇妙な不安感が織り込まれている。面白い話なのだが、読むのが苦痛なほど嫌悪感を感じてしまい、それでいてどうしても読んでしまう。作者はロリコンに対するカリカチュアである旨の自己評をしているが、幼女街娼のくだりなどは作者一流のリアリズムに溢れ、軽薄な批判以上の黒い世界を感じさせる。(8点)
[ 2008-01-03 16:41:10]
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