日常
作者:あらゐけいいち
雑誌:月刊少年エース
レビュー全文
6点
:景清さん
簡素な萌え系の絵柄で女子高生の何気ないが不条理な日常を描いたギャグ漫画…という、最近よくあるタイプの作品である。実際1巻を読んでみた際の第一印象はその程度のもので、あまり面白いとも斬新だとも思わなかった。背中にゼンマイ付けたロボ女子高生とかすぐ銃器を持ち出すツンデレ女とか鹿と格闘する校長先生とか、そういうちょっと妙なキャラ達を配置して
「どうです?日常に潜む不条理がよく描けているでしょ?」
とか言われてもなー、とちょっと困惑したりしてしまったものである。
しかし、それでもその作風とそのものズバリな「日常」というタイトルに何か引っかかる物を感じてその後も読んで見た所、”日常”という言葉をキーワードとしてみた場合本作はかなり面白いギャグ漫画ではないかと思うようになってきた。
本作のギャグは構図やコマ割・セリフの反復を多用したものが多い。中には時々別の話で使用したネタや構図をシチュエーションを変えてまた再利用、なんていう荒技もあるくらいだ。方向性はまるで違うが漫☆画太郎のセンスに近いものまで感じてしまったりもする。
反復・繰り返し、そう、つまりは”日常”である。日常と平凡は同義語ではない。どんなにシュールな状況でも、それが何度も繰り返されれば立派な日常の出来上がりである。そしてこの漫画はそういう作業を延々スタコラと積み重ねている。うまいな〜と思うのは、前の話で使用した小ネタや小道具が思わぬ形で別の話に尾を引いたり、背景の何気ないヒトコマが別の話とリンクしていたり、と奇妙な事柄を積み上げ、つなぎ合わせていくことによって次第にその”日常ワールド”のパズルのピースが埋まっていくかのような妙な快感を感じてしまう点である。これはなかなか簡素に見えて手の込んだ作りに思える。
またうまいな〜と思うのは絵柄である。一見すると中学生でも描けそうなくらい単調な感じの萌え絵だが、時々演出として使用される連続写真のようにキャラの動きを分解してみせる表現や、単行本の表紙に見られるような斜め構図で大量の小物を書き込む描写など、地味に非凡な才能を感じてしまった。
これもやはり方向性は全く違うが、大友克洋に近いセンスまで感じてしまったりする。
それと、景清だけに「ムカデがムカッデくる」には激しくわらってよりとも。
[ 2009-05-10 19:35:48]
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