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FRONT MISSION DOG LIFE & DOG STYLE
作者:C.H.LINE

雑誌:ヤングガンガン

 レビュー全文  

7点  :booさん 

「格好いい戦争などありはしない」という帯と太田垣康男が原作というのに惹かれて読んでみた。
ゲーム、フロントミッションの世界を舞台とした戦争オムニバス。戦場で誰にも気づかれることがないという戦場カメラマンの犬塚を狂言回しとしてヴァンツァーというロボットを使用した凄惨な戦争が描かれる。

基本的には1巻未満の短編が連なった構成です。犬塚が登場することを除いてはどの短編もつながりはありません。
この作品で描かれる戦争はひたすらえぐい。死ぬ思いをして死線をくぐり、敵兵を殺しても爽快感などみじんもない。そんな中、戦場の透明人間犬塚はひたすら惨劇を楽しみより残酷なシーンを撮ることに全力を尽くす。そのような犬塚に嫌悪感を感じない人はいないでしょう。
しかし読み進めていく内に気づかされてしまう。犬塚は自分なのだと。カメラのファインダーや新聞記事を通してしか戦争を知ることができない私達。実際戦場にいながらも現実感の欠片もなく戦争を眺めている犬塚や、犬塚の撮った動画を興奮して見ている人々には戦慄せずにはいられない。戦争に嫌悪感を抱きながらも「刺せ! 止めを刺せェェ!!」と犬飼と一緒に叫んでいる自分も確実にいるのだから。共感できてしまう身近な狂気というものがこの作品の特異な雰囲気でしょうか。

個人的なお気に入りは何も持たない男と全てを持っていた男の話「英雄の十字架」と珍しく犬塚が主軸にすえられた「UnLuckyDays」。英雄の十字架は戦争の矛盾と狂気にひたすら圧倒され、UnLuckyDaysは人間の二面性と善意とは何か考えさせられた温かみがありながらも毒の強い傑作です。
現在連載中の「羊飼いの帰還」は話の長さといいストーリーといい異色の章となっています。かなりエンタメの方に軸が傾いていて今までと話が違いすぎる気がしますが果たしてどうなるのか。

かなり皮肉な構成の本作ですが毒にならなければ薬にもならないということでかなり質の高い戦争アクションとなっています。エロとグロがかなり露骨に描かれるので苦手でなければどうぞ。元ネタのフロントミッションを私は知りませんが全く問題ないです。
架空世界の戦争ものだとこれと機動旅団八福神はもっと読まれていいと思う。
[ 2011-08-20 16:38:50]
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