青い春
作者:松本大洋
雑誌:短編集
レビュー全文
7点
:booさん
松本大洋の青すぎる春。
松本大洋初見だとかなり取っ付き難く感じるかもしれない。もしかしたらピンポンや鉄コンを既読の方であっても。
度胸を示すために簡単に命を懸ける。
ロシアンルーレットで生を感じる少年達。
取り返せるものならば…打てども打てども終わらない夏。
ヤクザの世界に飛び込む木村と誘い入れる鈴木。
飛べなかった少年は糞ったれな現実にピースする。
繰り返されるだべり。噛み合わない会話。
終わらない悪夢と報われない思い。
青春の鬱屈とした全てがここに詰まっている。
「誰か俺をこの檻から出してくれ!」
少年達の心からの叫び。閉塞からの開放を求める思い。出口は無い。
だからこそ青い春を読むときは息が詰まる。でも思い返してみれば、あの頃はそんなだった気がする。
青い春は松本大洋が奏でる青春のブルースだ。ただ本来のブルースというのはやりきれない現実や思いだからこそ明るく歌い上げる意外にノリのいい音楽なのだけど、ここにはひたすら陰鬱なものしかない。
でもこの暗く、青すぎる抑圧があったからこそ鉄コン筋クリートやピンポンで見せた解放がある。
青い春という作品は松本大洋のイニシエーションだったのかもしれない。トンネルの中が暗いのは当たり前なのだ。
松本大洋、この時未だ26歳。そのあまりにも青く鮮烈な才能が垣間見える。
[ 2011-10-18 01:41:38]
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