ピアノの森
作者:一色まこと
雑誌:モーニング
レビュー全文
8点
:臼井健士さん
天才ピアニストと謳われた「阿字野壮介」。そのピアノの音色は聴くものの心を捉えて離さなかった。
だが、自動車事故によりその腕をケガによって奏者としての生命を絶たれてしまう。さらに同乗していた婚約者も亡くなった。
生き残りながらも「魂の抜け殻」となった壮介は小学校の音楽教員として無為な日々を過ごす。
しかし、一人の少年との出会いが生きる意味を見失った元・天才ピアニストを再生させる。
かつて愛用していて用済みとなった自身のピアノが森に捨てられ、そこで一人の少年の音楽の天分を開花させる役割を担っていたのだった。
一ノ瀬カイ。決して恵まれた家庭環境ではないながら、母親の溢れる愛情を受けて育つ。
そしてそのカイの力を見抜いた同級生の少年、雨宮。
「天才」と「秀才」の対決はそれぞれの師匠である壮介と雨宮の父との代理戦争のような因縁めいた展開へと繋がる。
やがて成長したカイは世界の大舞台にて雨宮とその腕を競うことになる・・・・・・。
秀逸なのはタイトル。普通なら「森のピアノ」とするところを「ピアノの森」とした点。
森がピアノを包むのではなく、ピアノの調べが「森を形成する」という作品を通して貫く主人公の特性。それを現しているのだ。
音楽漫画はいかにして紙面に「音を再現させる」かがキモ。
だから成功作品は少なく、最近では「のだめカンタービレ」と「ピアノの森」くらいだ。
逆に人気の「けいおん!」にはこの両作品のような「紙面上に音楽を再現する」というような技巧は全く見られない。
音楽をテーマとしながらも、前者と後者の決定的な違いを挙げるとしたらそこだろう。
[ 2010-11-23 12:42:11]
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