日本の兄弟
作者:松本大洋
雑誌:短編集
レビュー全文
6点
:booさん
日本の兄弟も青い春と同様に松本大洋の負の部分が発揮された作品だ。
でもこちらの方はともすれば抜けられずに死んでしまいそうな、そんな暗いものがある。
「何も始まらなかった一日の終わり」シリーズでは死を見つめている。
死に向かって飛ぶ青年。
初めて死を意識した少年。
死を目前にした男の回想。
それはLOVE2 MONKEY SHOWでも変わらない。
「死」は日本の…シリーズから転じて「虚無」になる。
あきらめ、都市の中での孤独感、疎外感、松本大洋の線は抽象的な寂しさを表すのが上手い。
そういう虚無感から生まれたファンタジーが日本の兄弟だろうか。そこでは勉強に意味はない。クジラが雨を降らすユートピア。
頑張って言葉で表そうとしてみたけど、難しい。それはやはり松本大洋がはっきりとしない感情を漫画にしたからかもしれないし、まだこの時は表現力がテーマに追いついていない部分もあるのかもしれない。
同一ではないが、Sunnyにも登場するハルオやはげまし学級という名前もこの作品には見られる。抽象的にならざるを得なかったのだろうか?
ダイナマイツGON GONだけはこの短編集の中での位置づけがよく分からない。わりと明るくて単純な話な気がするので他の短編とのつながりがあまり見えないのだけど。
私が一番印象深かったのは「何も始まらなかった一日の終わり」のハルオ編。
私は小さい頃、自分が初めて死を意識した日を覚えている。きっかけは忘れたが、両親も、そしていつかは自分も消えてなくなると知ってしまったことを覚えている。あまりにもショックで吐いたことを覚えている。
そういうある意味原始的な死への恐怖がこの短編集にはある。そして死は虚無と隣り合わせだ。
ちょっと怖くなるような、病んでしまうような、日本の兄弟はそんな作品。
[ 2011-10-19 00:22:02]
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