ミラーボール・フラッシング・マジック
作者:ヤマシタトモコ
雑誌:短編集
レビュー全文
6点
:booさん
ヤマシタトモコの短編はおもしろい。少ないページ数の中でぱっと惹きつけて、クスっと笑わせて、ばっさりと終わる。短い時間でもしっかり楽しませてくれて、なおかつ後に引きずらない。私が短編漫画に求めていることが過不足なく揃っている気がする。
そんなヤマシタトモコのピリっとした鋭さは、このミラーボール・フラッシング・マジックでも存分に発揮されていた。
特に表題作の「ミラーボール・フラッシング・マジック」が秀逸。一つのミラーボールを巡る連作ものなのだけれども、まさにミラーボールのようにギラっと光っては回転し、新たな面に光が当てられていく。その一瞬の光がとにかく強烈で、でも一瞬後には何も残らない。そのくらいスピード感のある鮮烈な読み心地。
またオチが素晴らしくくだらなくてねぇ。そして手法的にも巧いのに、巧い!とは言いたくない絶妙にしょぼい雰囲気が良い感じ。素敵な奇跡の話でした。
これに限らず、コメディカルな話に関してはさすが今ノリに乗ってるヤマシタトモコという感じで。「エボニーオリーブ」なんて、女3人のぐだぐだなガールズトークがこうまでおもしろい物語に仕上がってしまうんだからお見事というしかない。
対して、愛とか恋とか女とか、そっち系をメインにした話は正直あまり乗りきれなかったりして。どんどん一人称の語りで物語が進んでいくので、登場人物に興味もなく共感も出来なかった自分にとってはなかなかに厳しいものがあった。
またヤマシタトモコがこの短編集で描く女性はいつもにまして、生々しいので気持ち悪いと感じる人もいるかもしれない。女教師のわき毛を妄想する話があったり、描かれる身体が微妙にたるんでいたり、乳に静脈が浮かんでいたり…。私はそんな微妙にフェティッシュな感じがけっこう気に入っているのだけれども。
「ドントクライ、ガール」と比べると、テイストが色々なので正直好き嫌いが分かれると思う。私自身、短編によってかなり印象が違うし。
ただ何といっても、後に引きずらないので気軽に読めて楽しめるのがありがたい。意外にそんな漫画は少ないものだよね。また新しい短編集を出してくれたるのを楽しみにしてます。
[ 2012-04-17 01:25:37]
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