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スーパーマン:レッド・サン
作者:デイブ・ジョンソン

雑誌:DC Comics

 レビュー全文  

8点  :booさん 

 小プロの最近人気の2000円シリーズ。正史ではなくパラレルワールドのスーパーマンのお話。いわゆるDCのエルスものというやつ。

 スーパーマンといえばアメリカのザ・ヒーロー的存在。とはいえあんまりにもテンプレートなイメージのあるヒーロー像が今一受けが悪いのか、日本では圧倒的にバットマン人気だよなぁ。まあアメリカでも最近はバットマンどころかグリーンランタンにさえ売り上げでは上を行かれているみたいだけれど。私もDCスーパーヒーローズ収録作とラストエピソード、スーパーマンの最期くらいしかスーパーマン関連の作品は読んだことがない。

 このスーパーマン:レッドサンにおいて、そんなスーパーマンの宇宙船はアメリカではなくソ連に落ちることに。ソ連で育った彼はスターリンの跡を引き継ぎ、共産圏の幸福の支配を世界に推し進めていく。スーパーマンに対抗するはアメリカを率いるルーサー、そしてソ連内のテロリスト・バットマンであった…。

 アメコミとしてはもちろん、SF・世界改変ものとして傑作。ソ連に落ちたスーパーマンというアイデアに留まらず、平和を愛するスーパーマンはスーパーマンゆえに独裁者となり、スーパーマンゆえの悲哀に直面する。決して明るい物語ではないのだけれど、そんなスーパーマンにはヒーローの魅力が溢れていた。
 そしてやはりとことん「個」の人間であるバットマンとはどこまでも相容れず、ルーサーは謎めいた存在ながらもさすがスーパーマンの宿敵たる存在感。さらにはワンダーウーマンやグリーンランタンまでもが登場し、本来とは立場・関係性を異とする彼らが破滅に向かって突き進んでいくストーリーからは目が離せない。

 しかしオチの鮮烈さはもちろん、この世界の円環構造にはちょっと唸らされてしまった。単純に上手いというだけではなくて、巻頭の言葉を借りるならマーク・ミラーの“灰色”なセンスがものすごい。理想的な共産主義的な管理社会を推し進めていくと、その先に待っているのはユートピアのようなディストピア!というありがちな結末、ひいてはいかにもアメリカ的な資本主義万歳な結末をマーク・ミラーはラストで全てひっくり返してしまう。スーパーマンとルーサーの対決が決して正義と悪の闘いではなかったように、とことんまで曖昧になる善悪の境界と幸福の定義。痺れるよこれは!

 値段も比較的手ごろで、アメコミの知識がなくても読める一冊。SFの中でも特に世界改変ものが好きな方なら外さないはず。ぜひぜひおすすめ。
[ 2012-09-17 16:33:46]
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