ひきだしにテラリウム
作者:九井諒子
雑誌:短編集
レビュー全文
8点
:クランベリーさん
竜を追い求めてきた作者が、竜ネタをスパッと切り捨てて送り出した珠玉のショートショート。
なんと全33篇とな。
メッセージ性の強かった作者の前2作品とは違い、皮肉や毒は詰まっているけど基本的に無害で、良く言えばサクサク読みやすい、悪く言えば軽くて後に残らない印象。
でも全体の透明感と読後の爽快感が秀逸で、とにかくバランスのとれた良作短編集。
星新一が好きだった人ならものすごくノスタルジーを感じてしまうかも。
それぞれのお話で絵柄が全く違うもんだから、知らずに読むとアンソロジー集にしか見えなくて。そういうところでも読者を楽しませてくれているのかな。
私が特に好きなのは一人裁判の話とグルメvs食生活に乏しい人の話。あと記号を食べる話も。
「ひきだしにテラリウム」というタイトルは収録されているうちの1篇から取られたもの。
このタイトルがすごく素敵だと思う。
ご存知の方も多いかもしれないけどテラリウムっていうのは要するにミニチュア箱庭のこと。言葉から世界の広がりとか連想できそうな気がしません? それがひきだしに詰まっているんですよ。
だから「ひきだしにテラリウム」っていうフレーズは「ポケットの中に夢がいっぱい」とかと同義の響きがして、とても好き。
この本のカバーイラストも、そんなひきだしから楽しいことがたくさん溢れ出てきたみたいで、夢があって良いですよね。
[ 2013-08-08 00:29:22]
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