御石神落としのレビュー
7点 そのばしのぎさん
原作がホラーや神道などをテーマに描いている漫画家の永久保貴一との事で読んでみた。
「夜這い」という言葉は聞くが、実際に農村などでの夜這いがどのような物であったかを知る人は少ないのではなかろうか。そんな農村での夜這いから江戸吉原の花魁、最後には平安の光源氏の世界にまで性風俗を舞台に漫画は時代を遡っていく。
ただのエロ描写に終わらず、赤松啓介的な民俗学的知識が垣間見えて深さを感じる。
現在の結婚制度などは主に明治以降の西洋化による影響も大きい。
しかし、西洋化というのは正しい事ばかりであったのだろうか。
松田優作の遺作となった映画「ブラック・レイン」では、マイケル・ダグラス演じるN.Y市警の刑事と高倉健が演じた、組織での行動を重んじる日本刑事の考え方の違いを非常にわかりやすく見せていた。
都会では下手すると隣近所にどんな人が住んでいるのかわからない位、家という単位を中心とした生活になっている。それでいながら、組織に属さないと何も行動できない、ムラ社会の一面を日本人はいまだに持ち続けている。
乱婚という形式も、誰が生もうが村で生まれた子は村の子ども、という考え方が普通であったから成り立つ。もちろん性病の心配といった問題もあるが、単純に現在のモラルに照らし合わせて良し悪しを決めるべきではないだろう。
話が飛躍するが、捕鯨問題についても同じ事だ。
クジラを食べる習慣がないから、クジラを食べるのは野蛮だ。
犬を食べる習慣がないから、犬を食べるのは野蛮だ。
こういった事を根拠に他の文化を批判するのは非常に愚かな事ではないか。
少し前にもアメリカで日本のアダルトゲームに対する抗議運動の記事があったが、
内容以前に、彼らは自国の犯罪発生率の高さを異常だとは思わないのだろうか。
モラルとは何か、という事を考えさせられる。
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[投稿:2010-09-04 22:53:32] [修正:2010-09-19 19:44:51] [このレビューのURL]