ホーム > 不明 > DC Comics > バットマン:イヤーワン/イヤーツー

7点(レビュー数:3人)

作者デビッド・マツケリー

原作フランク・ミラー

巻数1巻 (完結)

連載誌DC Comics:1986年~ / 小学館プロダクション

更新時刻 2011-09-02 17:55:43

あらすじ バットマン誕生から活動の1年目を描いたエピソード。

12年ぶりに故郷のゴッサムシティに戻った若き大富豪、ブルース・ウェインは、バットマンとなって犯罪との孤独な戦いを開始する。
一方、ゴッサムに赴任してきたゴードン警部補もまた、汚職に塗れた市警内部で、正義を貫くべく孤軍奮闘する。
同じ志に燃える二人の男の道は、やがて交わるかに思えたが…。

備考 邦訳が途中でストップしていたイヤーツーも併せて収録された「バットマン:イヤーワン/イヤーツー」が2009年にヴィレッジブックスから刊行された。
多くのアメコミと同様早くも絶版となっているので手に入れる際は注意。

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バットマン:イヤーワン/イヤーツーのレビュー

点数別:
1件~ 3件を表示/全3 件

8点 やじウマさん

たしかにイヤーワンはすごくよく出来ているのに対してイヤーツーとフルサークルは色々と粗が目立つ。
 話がご都合主義だし、マクファーレンの絵(最後の方はジジイと女の描き方がスポーンと同じである)もあってなんだかマーヴルクロスに入ってたスパイダーマンでも読んでいる気分になる(リーパーのデザインがすでにマーベルくさい)。

 だがしかし、この後にミラーが発表する人間嫌い、既存のメディア社会大嫌いなのがよく想像できる「ハードボイルド(バットマン関係ないけど)」「ストライクスアゲイン」や、他の作家の発表する「アーカムアサイラム」や「ロングハロウィーン」などの殺伐としたバットマンを読んだ後だとこのバットマンを単純に「駄作だ」と否定するのは少し気が引けてしまう。

 あの辺りを読んだ後にこの「イヤーツー」「フルサークル」の牧歌的な要素-アルフレッドが落ち込んでるロビンに一喜一憂するとかブルースウェインが素直に恋に落ちるとか-、を観ると「イメージが崩れてしらけるなあ」と思うと同時にどっかしらホッとしてしまうのも確かなのだ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-08-20 18:06:46] [修正:2012-08-20 18:06:46] [このレビューのURL]

7点 columbo87さん

 冒頭でフランク・ミラーはこう述べる。「私にとって,バットマンは決して面白おかしく扱える存在ではない」と。
 彼が語っているように「イヤーワン」のバットマンは,テレビシリーズのアダム・ウェストが演じるような明るいバットマン,昼間に堂々と活躍して市民の声援を受ける彼とは全く異なる。ミラーは恐ろしき「闇の騎士」としてバットマンを作り直し確立させたのだ。
 散発的に修正が加えられていたバットマンのオリジンを,よりダークで大人向けな内容に描き直したのが今作「イヤーワン」であり,この名作は以降の世界観に多大な影響を与えることになった。

 舞台はゴッサム,近代化と共に政治の腐敗とスラム化の進む都市である。今まさにこの都市へと向かう男が二人。一人はゴードン警部補,左遷された先は汚職に染まりきったゴッサム市警。夫であり父親でもある彼は,悪に染まった都市でこれから生まれる子供を育てたいとは思わない。
 もう一人は若き富豪ブルース・ウェイン。長き旅を経て両親を失った場所へと戻り,己が振るうべき力の形を探し始める。
 家族を支える為とはいえ,汚職に目をつぶることのできないゴードンは組織内で孤立し,同僚から制裁を受ける。しかし彼も黙ってはない,彼は夫である前に男なのだ・・・
 一方でバットマンという形を見つける前のブルースは自警活動の下見で大失敗をおかす。悪を裁くには正道から逸脱しなくてはならない。恐怖を悪に植え付ける存在へと進化しなくては・・・
 やがて二人の物語は絡み合う。数々の事件を解決し市民からの支持を受けつつあるゴードン。バットマンとしての活動が軌道に乗り始め,ゴッサムを貪る悪を震え上がらせるブルース。偶然,二人は協力して事故に会いかけた老人を救う事になる。
 そして、次第に互いが信頼に値する人物だと認識し始める。互いがその活動を支えるために必要な力を持っていることも・・・。
 これは私に今まで無かった認識だった。二人が表裏の関係であるとは,意識したことが無かった。ゴードンという人物像を細かく描いた理由はここにあったのか。単にシグナルを出して危険な仕事を依頼するだけだったゴードンは,その裏で重荷を背負いながら奮闘する立役者だったのである。
 活動1年目における人物関係,ミラーはその要素を過不足無く,見事に抽出している。街に巣くうマフィア,力は無くとも正義の為に戦うハービーデント,全く別のポリシーを持つセリーナ/キャットウーマン・・・そして口の端に上る「メトロポリスのお友達」。読者の想像力をかき立て,それでいて鬱陶しい程には主張してこない。伏線とはこう用意するものなのかと感じ入る。
 どこを見ても、「イヤーワン」は,ゴードンとバットマンの再出発を飾るストーリーに相応しい傑作であると感服させられる。

 ミラーの作品を知っていると感じる面白さにも触れたい。活動初期の力任せでどこか未熟なバットマンは,「ダークナイトリターンズ」において肉体的には衰えたが技術と戦略で切り抜ける老バットマンとの対比として面白い。そしてゴードンの不倫,これはお得意のハードボイルドで「夫である前に男なんだ」なんてかっこつけられない部分だ(下世話だが,他人の痴話話は面白い)。
 また,バットマンに空を滑空させるシーンは,ミラーが完全に子供っぽいバットマンを否定しているわけではないことの現れだろう。アルフレッドの軽口を真に受けるブルースの顔はどこか微笑ましい。
 子供っぽさといえば,マフィアと通じている本部長が,スヌーピーやミッキーのグッズを収集しているのも何だか笑える。アラン・ムーアの「V・フォー・ヴェンデッタ」に登場する人形収集癖のある権力者を思い出した。支配欲求はどこかしら幼稚な面を伴うのだろうか。

 最後に,この作品の最も秀でているところは,ミラーの洗練された脚本とデビット・マッツケーリのスタイリッシュで柔らかみのあるアートが相まって,非常に読み進めやすい点にあると思う。優れたアメリカンコミックスを読んでいると,まるで映画を見ているような感覚に陥る(映画の方が表現物として上と言う意味ではない)。これはクリストファー・ノーランが「バットマンビギンズ」にかなりの量の要素をイヤーワンから借用していることからも伺い知れるだろう。今作はとにかくオリジン,始まりの物語として考え得る最良の要素に満ちているのだ。
 
 悲しいのはその優秀さが,併録されている「イヤーツー」によって尚更引き立てられていることだろうか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-02 20:16:59] [修正:2012-03-31 01:37:33] [このレビューのURL]

6点 booさん

 バットマンの一年目を描いたミラーの有名作。

 クライシス後に仕切りなおしたバットマンの再出発を飾ったのがこのイヤーワン。DKRの流れを引き継いで、その後のバットマンの方向性を決定付けた傑作に星三つとは何ぞや?と怪訝に思われる方もいそうで戦々恐々ですが、これにはいくつか理由がありまして。
 
 実は私が読んだのはこのヴィレッジのイヤーワン/イヤーツーではなくて、さらに言うとジャイブのイヤーワンでもなくて、以前小プロから刊行されていたスーパーマン/バットマン。普通に買うよりこっちが安いし、スーパーマンのオリジンであるマン・オブ・スティールが読めるのはこれしかないし、こっちがお得じゃね?と思ったら一つだけ落とし穴があったのですよ。
 というのもジャイブ以降のものは今のアメコミの主流であるシックな色合いでリカラーリングされているのだけど、S/Bに収録されているものは昔のアメコミのイメージそのままのような原色の派手派手しいカラーリングになっちゃってる。00年代のアメコミ読みである自分にとっては、この良く言えば“味のある”カラーリングは正直辛いものがあって…。てか同年代のマーヴルクロスと比べてもこれのイヤーワンのカラーはかなり粗雑だと思う。

 じゃあ新しいのを買えばいいじゃん?と思われるかもしれないけれど、新しいのは絶版かつひどいプレ値になっているのだよ、アメコミ読みは周知の通り。しかしバットマン入門書として一番に勧められるであろうこの作品が絶版というのは不味いと思うんだ、うん。ヴィレッジが小プロに比べて規模が小さいのは分かった上で、これはアメコミの一つの入り口だからなぁ、頑張って欲しい。再販希望も多いだろうに。
 どうしても読みたい、でもあの値段は無理、という方はカラーリングが昔風というのは覚悟した上でスーパーマン/バットマンを買うと比較的安い。もしくはイヤーワンの原書か。ただ来年ダークナイト・ライジズが公開なので再販の可能性も高いとも思われるわけで…。保証はないので各自でご判断くださいな。

 作品自体とはちょった離れた話になってしまったので、話を戻す。
 
 名前の通り、イヤーワンはバットマンの一年目のお話。冒頭で述べたように、DKRの路線を引き継いだバットマンの作風となっている。シリアスで重厚な雰囲気とミラーお得意のハードボイルドなストーリー展開が格好良い。
 バットマンも各地で修行してきたとはいえ、まだまだ犯罪者と戦うのには慣れていない。手ひどいミスを犯し、大怪我を負うこともある。一方後の盟友、ゴードンもゴッサムの警察署に配属されたものの困難は多い。腐敗した警察署に戸惑い、立ち向かうものの孤立するゴードン。二人ともまだまだ若く青いが、それがまた妙に人間くさく、好感が持てるのはミラーの手腕ゆえ。ゴードンなんて浮気もしちゃうし。
 そう、これはバットマンの一年目だけではなくて、ゴードンの一年目でもある。バットマンが立ち上がる話でもあり、ゴードンが立ち上がる話でもある。そして彼らに少しだけではあるが、確かな絆が生まれるまでが描かれた作品なのだ。

 私はミラーのハードボイルドは大好物なのだけれども、イヤーワンに関してはどうしてもボーン・アゲインと比べてしまう部分がある。基本プロットが似てて、ボーン・アゲインの方があまりに素晴らしすぎる、となるとイヤーワンの感動が薄れてしまうのもしょうがないかなと思うわけで。
 ただ前述したように、カラーリングがあまり合わなかった部分もあるから一概には言えない。いつか復刊して改めてリカラー版を読み直したら、もう一度何かしら感想は書こうかなとは思ってる。

 しかし個人の好みは置いておいても、バットマンを読んでいく上で最重要級な作品であるのは間違いないのでつくづく絶版なのは残念だなぁ。「The Man Who Laughs」から、「ロングハロウィーン」のような忘れられたマフィアを拾ってきたものまで初期作品群につながる伏線はいくつもあるし、何といってもオリジン読まないと始まらないというのはあるわけで。
 しかしやはりそういう意味では、続編を作るのに広く幅を持たせた上で違和感なく物語を作り上げたミラーはすごいな。バットマン始まりの作品としては単体の質としても、その後の可能性を無数に示したという意味でもこれ以上が望めない傑作であることは間違いない。

 スーパーマン/バットマンの刊行が中途でストップしたため、イヤーツーは私も中途半端なところまでしか読んでいないから何とも言えない。どうやらイヤーワンに比べると小品というのが一般的な認識のようだけど。
 イヤーツーは現在なかったことにされてるっぽいしまあいいさ、っと書いてみて一応英語wikiで確認すると…おいおいゼロアワーでなかったことになってインフィニットクライシスでまた微妙にあったことになったらしい。呪われよ!

 現実世界でも何とかクライシスが起こって絶版とかS/Bの刊行ストップとか色々なかったことにならないかな、ついでに「A Death in the Family」につながるイヤースリーまで含まれた完全版が出ないかな、とかどうしようもないことを言ってオワル。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-12-09 02:30:32] [修正:2011-12-09 08:13:05] [このレビューのURL]


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