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10点(レビュー数:2人)

作者デイブ・ギボンズ

原作アラン・ムーア

巻数1巻 (完結)

連載誌DC Comics:1986年~ / 小学館集英社プロダクション

更新時刻 2011-09-19 02:53:30

あらすじ 1985年、核戦争の危機が目前に迫る東西冷戦下のアメリカで、ある日、ひとりのニューヨーク市民が殺害される。政府により禁止されたヒーロー活動を続けていたロールシャッハは、独自の調査で、殺害されたのが、かつての仲間コメディアンであることを突き止める。これはヒーロー抹殺計画の第一段階なのか? 事件を追ううちに、ヒーローたちはそれぞれの心の闇に直面し、やがて世界を根底から覆す巨大な陰謀に巻き込まれていく……。

備考 SF界でもっとも権威のある賞であるヒューゴー賞をコミックとして唯一受賞。以前電撃プロダクションで刊行されていたが現在は絶版。2009年に再び小学館集英社プロダクションにより完全改訂版が刊行された。

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ウォッチメンのレビュー

点数別:
1件~ 2件を表示/全2 件

10点 やじウマさん

いろいろと忘れられないことがたくさんある。でも実はいちばん衝撃的だったセリフは「失礼な!黒人はみんな知り合いだとでも言うの?」だったりする。

ウォッチメンをWATCHMENで登録する意味がどこにあるというのだ・・・!そのせいですごい探しにくかったよ!

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-10-21 20:29:14] [修正:2012-10-21 20:29:14] [このレビューのURL]

10点 booさん

読んでない人は人生を損してる、なんて本気で思う唯一の作品。

とりあえず代表的な作品を一つ挙げろと言われた時に、アメリカ映画ならショーシャンクの空に、アメリカ文学ならグレート・ギャツビーを挙げる人が多いと思う(違ったら申し訳ない)。ではアメリカン・コミックなら?…間違いなくこのWATCHMENだ。

アメコミを変革し、それ以降もアメコミ史上最高傑作の地位は揺るがない。
というかもはやアメコミの中で、なんて枠を飛び越えて漫画や映画、小説などの表現媒体を超えて評価できる限られた作品とすら思えるし、実際そのことは色んな賞や人の感想が証明していて今さら言う必要もないことかもしれない。

「だれが見張りを見張るのか?」

アラン・ムーアが、現実社会にヒーローがいたらどうなるのか?、という単純な疑問を偏執的なほどに膨らませた結果WATCHMENは生まれた。

この作品では一人を除いてヒーローもまた普通の人間に過ぎない。かつては人気だったヒーロー達だが、1977年に制定されたキーン条例によって政府から認められた者以外の自警活動は禁止される。ヒーローのおかげでアメリカはベトナム戦争に勝利した。唯一超常的な力と頭脳を持つDR.マンハッタンはアメリカの軍事力であり他国への抑止力となっている。
ここはムーアが妄想したヒーロー達が実在する世界。冒頭でヒーローの一人、コメディアンが殺される場面からこの物語は始まる。このコスチュームを着たヒーローが変態扱いされる時代に(実際いたとしてもそうなるよ笑)、現役もしくは元ヒーロー達は何を思い、何を見つけ、どこへ至るのか。

理想の漫画とは何だろう?
私は何度読んでも飽きが来ない、おもしろさが薄れない漫画だと思う。WATCHMENはその理想に限りなく近い。私はこの作品がどんなことを描いているかを書くことができない。何をどれほど描いていると言っても、それ自体は正しいかもしれないがそれでこの作品を完全に表すことはできないように思える。惹きつけられる金鉱がたくさんあって、掘り尽くしたと思ってもまだまだ次が待ち構えているとでも言えば分かってもらえるだろうか。
それほど重層的な作品かつ情報量が膨大なので読むたびに新しい発見がある。ダブルミーニングやトリプルミーニングなんて当たり前、背景の壁の落書きや各章の間に挟まれた作中での新聞記事や評論まで世界の構築に一役買っているほどだから読み進めるのにかつてない時間がかかるし、だからこそ読むその時々によって受け取り方や解釈が違ってくることが珍しくない。それほどWATCHMENは魅力的に”揺れて”、最高の読書体験を味あわせてくれる。

WATCHMENは下手な文学が裸足で逃げ出すほどのストーリー性の高さとムーアの革新的(偏執的とも言う)表現技法が相まって傑出した名作に仕上がった。
私はこの作品なら軽く3日語り続けられる自信がある。それは完璧なのに揺るがないことが何一つないという奇跡的なコミックだからだ。例えばロールシャッハを酒の肴に誰かと飲めたらどんなに楽しいことだろう。
ここに色んな部分について私の解釈を書きたいという強い衝動には駆られるもののそんなことをするとすでに長い文が書き終わらなくなるほどになってしまうし、何よりも誰かの考えに縛られてこの作品を読んで欲しくないのでやめておくことにする。

ムーアはWATCHMENでヒーローを徹底的に解体した結果、ヒーローを救いようのないものにしてしまった。
だからこそ浮かび上がってくる「ヒーローとは?」の答え。
グリーンランタン/グリーンアローでハルはこんなことを言う。「正義とは悪とは何なのか。もはや政府でさえ正しいとはいえない時代だ。」
外に答えを求めることができない以上、自分の倫理観や信念に絶対的に従って行動が出来る人間がヒーローと言えるのかもしれない。例えば”たとえ世界が滅んでも俺は妥協しない”という人間なんてね。しかしその結果独裁者みたいなのができかねないとあってはそれはヒーローなのかな? そういう人間こそが世界を変えることが出来るのだろうけど…。

作中に登場するヒーローの一人のロールシャッハという名前はもちろんインクの染みを見せてその解釈を問うあの精神分析に由来する。WATCHMENはまさにこのように、読む人やその人の状況によって作品やその作中ヒーローへの感想解釈が異なってくるコミックだ。
ナウシカのレビューで、ナウシカが終盤でとった行動に対して是非が分からないという方達がいたと思う。そんな人にこそぜひ読んでいただきたい。そのエッセンスを100倍も濃縮した要素がこの作品にはあるし、どんなに小汚くともロールシャッハとナウシカは本質的には同じ人間だから。もしかするとオジマンディアスさえも。

ヒーローとは何なのか?何が正しくて何が悪いのか?世界の、人間の意味とは? 繰り返される疑問符。読むたびに私の脳はびんびんに活性化される。痛いほどに刺激的な読書体験。この作品に飽きる時なんてくるのだろうか。

もう1回言う。読んでない人は人生を損してる。

【追記】
ウォッチメンは異形の文学作品としての傑作であって、例えば少年漫画の王道として傑作であるスラムダンクとは全く趣が異なります。
膨大な情報量と構成を自分の中で消化する、もしくは消化しようとする作業をページを行きつ戻りつしながら楽しむ作品です。読みにくいのは当然なわけで、漫画は軽く読めるから好き、なんて人は絶対相容れないでしょう。少し値の張る作品なのでそこをしっかりと考えてから購入を決めることをおすすめします。映画に否定的な意見が多いのはこの内容を2時間半に詰め込んだことと映画の読み返せず消化する時間を与えてもらえないという特質ゆえだと思う。原作を読んでからだとかなり印象が違います。
ただし同ページの小説を読むよりはるかに時間がかかる、というか時間をかけて読まないとおもしろさが分からないので決して高くはないはずです。私のようにかけがえのない漫画の一つともなればなおさらね。

しかしレビューを読み直すとあまりにもハードルを上げてしまった気がする。その人にとって本当に楽しめる作品ならそんなのは軽く飛び越えていくからまあいいか。あまりに期待しすぎて…なんて言われたら何も言えないですが。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-09-23 03:40:55] [修正:2011-09-25 00:21:25] [このレビューのURL]


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