ホーム > 不明 > 短編集 > 泡日

6点(レビュー数:1人)

作者高浜寛

巻数1巻 (完結)

連載誌短編集:2004年~ / 有学書林

更新時刻 2011-11-13 20:55:07

あらすじ 書き下ろし作品74ページに、未収録作品を加えた短編集。

備考 短編集のため連載開始年は発行年を記載。

シェア
Check

泡日のレビュー

点数別:
1件~ 1件を表示/全1 件

6点 booさん

 かなり作者がギリギリの位置に立っている短編集に思える。とは言っても「泡日」という作品集自体は高浜寛の他作品と比べてもかなり可笑しくて、ユーモラス。
 
 高浜寛は漫画家として決して楽な道のりを辿ってきた方ではないし、精神状態がかなり落ち込んでいた時期があるというのは色んな所で自身が語っている。泡日では高浜寛本人をモデルとした短編も描かれているが、やっぱりそこにおいても高浜寛は情緒不安定。
 でも現実においてどうかは知らないけれど、漫画において彼女は辛いことや馬鹿らしいことを笑い飛ばすことができる。それはやっぱり今までと変わらず“滑稽”で、生きていることを強く感じさせる。泡日は高浜寛作品の中でもとても可笑しい。しかし読んで笑いながらも、その裏に潜むものは決して明るいものではないことに気付いた時、何とも言えない気持ちになる。

 表題作「泡日」は中編ではあるものの、決して長くはないページ数の中でえっちゃんという人間はしっかりと浮かび上がっている。院長先生などの脇役だってそう。彼らは私達と同様に面倒くさい人生を生きている。だからこそ面倒くさいけれど、面倒くさいことを笑ってやろう、こちらまでそんな気分になるのだ。
 高浜寛の転落する一歩手前の瀬戸際で、それでも自分を笑い飛ばせる強かさ。それは決して悲壮な笑いではなくて、とっても前向きなものだ。すごい人。

 作品の多くは大まかにはラブストーリーになるだろう。でも高浜寛はもはや変わらない愛なんて、純愛なんて幻想を信じてはいない。現実にはごたごたが付いてくるわけで、ずっと高校生ではいられない。
 それでも高浜寛は愛という言葉を口にするんだよなぁ。何か恥ずかしそうに、手が届かないものであるかのように。“こんな時代に愛のある話じゃないか?”…本当にそうなのだ。やっぱりこれは大人のラブストーリー。しっかり地に足ついた人間の物語。

 やっぱり高浜寛の作品は良い。決して読みにくくはないのにしっかり現実とつながっているから読むのにエネルギーを使う。そしてそのエネルギーの分だけ良い物語を読んだ充実感を与えてくれる。一番地味な印象があるけれど、他の高浜寛作品を読んで気に入った方はこちらもおすすめ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-01-18 23:24:31] [修正:2012-01-18 23:24:31] [このレビューのURL]


泡日と同じ作者の漫画

高浜寛の情報をもっと見る

同年代の漫画

短編集の情報をもっと見る