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7点(レビュー数:1人)

作者近藤聡乃

巻数1巻 (完結)

連載誌ハルタ:2008年~ / エンターブレイン

更新時刻 2012-04-28 02:02:21

あらすじ うさぎのヨシオ。夢は漫画家になること。喫茶店でアルバイトをしながら、漫画家を目指すヨシオ。出版社に持ち込みに行ったり、バイト先の美人客に心奪われたりしながら、一歩一歩、漫画道を進んでいく。これはひとりの青年の、恋と仕事と夢の物語なのです(……ウサギだけど)。

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うさぎのヨシオのレビュー

点数別:
1件~ 1件を表示/全1 件

7点 booさん

 近藤聡乃という作家は、最近のいわゆるガロ系の代表格の一人になるのだろう。幻想的な物語と美しい線、そして奔放な絵。紛れもない天才なんだけど、届く人を選ぶというのが私の印象だった。
 しかし「うさぎのヨシオ」で彼女が見せるのはこれまでと異なる全く新しい魅力だ。しかも何と四コマ漫画なのだからねぇ、いやはや恐れ入る。これはより広い人の心に届く、嬉しい近藤聡乃の新境地。

 つげ義春に憧れ、喫茶メリィでバイトをしながら漫画家を目指すうさぎのヨシオ。漫画を描いたり、恋をしたり、悩んだり…愉快な仲間に囲まれながらヨシオはまんが道という青春を歩んで行くのです!

 おもしろい会話を描ける漫画家はセンスがあるというのはまあ間違いのないことで。軽妙洒脱なテンポの小気味良いやり取りというわけでもなく、すんごくゆるーい雰囲気にも関わらず、この漫画では会話が不思議とおもしろい。
 一つには、会話がすごく自然なのだ。実際音読してみれば分かるように、なかなか漫画の台詞って芝居がかっちゃうものなのだけれども、この作品ではほとんど違和感がない。冗談のどやっ!みたいな感じも含めて、なさそうでありそうな感じ。だからこそ、けっこうな台詞の多さにも関わらずすらすらと読まされる。

 そんな会話が楽しめるのも、ヨシオくんはもちろん、バイト仲間のメリィさんやミカちゃんなどのキャラクターの造形が素敵だからこそ。しかしまさか近藤聡乃の漫画で、会話の妙や素敵なキャラに魅せられるなんてね…。百年の孤独の次の一冊に101回目のプロポーズのノベライズ版を勧めるセンスは素晴らしい笑。

 ヨシオに関してはどの程度かは分からないけれど、近藤聡乃自身が重ねあわされているのだろう。それもかなり意図的に。これ、近藤聡乃流のメタな手法だと思うのだけれど、巧いよなぁ。
 つげ義春に憧れるヨシオ、つげ義春の影響を受けて奇をてらったあたりがありきたりだねと言われるヨシオ、ストーリーの弱さを気にするヨシオ…読む側はどうしてもその裏に近藤聡乃の影を見てしまう。そんな影が、実はヨシオのまんが道としての物語を一段上に押し上げているわけで。つくづくおもしろい。

 また相も変わらず、近藤聡乃の絵は良い。四コマということで、これまでよりかなりライトで見やすい画風になっているからこそシンプルな描線の美しさが際立つ。やっぱり漫画で大事なのは一枚絵としての美しさじゃないんだよなぁ。連続したコマの美しさをこれ程までかと魅せてくれる点で、「うさぎのヨシオ」には漫画の醍醐味がぎゅっと詰まっている。

 今までの近藤聡乃の漫画は個人的に好きではあっても、なかなか人に勧める気にはなれなかった。届く人を選ぶからこその良さだと思っていたし。
 でもこの「うさぎのヨシオ」で近藤聡乃は彼女の良さはそのままに、読者の側にぐっと寄ってくる。簡単なように見えて、奇跡的な離れ業。また改めてその才人っぷりにほとほと感嘆しました。だからこそ多くの人に読んで欲しいし、より広い人の心に届くであろう四コマ漫画。おすすめ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-05-13 14:14:32] [修正:2012-05-20 22:54:27] [このレビューのURL]


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