ホーム > 青年漫画 > 月刊IKKI > Golondrina-ゴロンドリーナ

7点(レビュー数:1人)

作者えすとえむ

巻数5巻 (完結)

連載誌月刊IKKI:2011年~ / 小学館

更新時刻 2012-11-06 23:24:35

あらすじ 私は闘牛士になって、闘牛場で死ぬ――! 同性の恋人・マリアから裏切られて自ら死を選ぼうとしていた少女・チカ。しかし、彼女を轢きかけた男・アントニオによって保護された。翌朝、チカがアントニオに保護した理由を尋ねると「男だったら、闘牛士にでもするつもりだった」と冗談とも本気ともつかない返答が。しかし、チカはその言葉を真に受けて「闘牛士になる。そしてマリアの目前で死ぬ」と宣言。己の言葉通り、数少ない女性闘牛士になるべく苦難の道を歩み始めたチカだが…?『うどんの女』『はたらけ! ケンタウロス』などで業界の注目を集めているえすとえむ、青年誌初連載作品!

備考

シェア
Check

Golondrina-ゴロンドリーナ のレビュー

点数別:
1件~ 1件を表示/全1 件

7点 booさん

 恋人マリアに裏切られ、自殺しようとしていたチカ。しかし彼女はその際で妙な男レオナルドに出会い、彼の言葉を受けて誰もが見える場所で“死ぬために”女闘牛士になることを決意するのだった…。

 自殺願望を持った女性が死ぬために女闘牛士になるというとけっこうとんでもないけれど、要はチカ(スペイン語で女の子の意)が自分の名前・居場所を見つけていく物語だ。そういう意味では闘牛という題材は脇に置いておくけば、決して珍しくない普遍的なお話だと思う。

 しかしそんな物語よりも、えすとえむのハッタリの力に惚れ惚れとしてしまった。
 元々この人は現実味があってなおかつ格好良い外国・外国人を描ける、何気に稀有な作家のように思う。そういう意味では絵柄が似通っているオノナツメや多くの少女漫画のような現実味の感じられないひたすらお洒落な外国の生活を描くわけではないということで。でもえすとえむの描く海外の暮らしには生活観が溢れているにも関わらず、最高に素敵で格好良い。

 そんなえすとえむが描く「闘牛」のその迫力と存在感にはちょっと酔いしれてしまった。私は多くの世間一般の人と同じように、闘牛について特に詳しい知識はなくて、年に何回かテレビのニュースで流しているのを見る程度。正直に言うとあまり興味があるわけでもなく、牛を見世物で殺すのは残虐のように感じたりもする。
 しかしえすとえむのフィルターを通すと、それがこんな風に見えるのかというのは本当に鮮烈な体験だった。目の前にいるのは私たちがいつも食べている牛とは思えない。一種神とも言える風格を醸し出す存在。そんな神の前に立ち、彼らと一体になり、そして最後には刺し殺す。そんな強烈な一体感と忘我の瞬間をえすとえむは鮮烈に切り取ってしまう。

 何気に登場人物だって大したことを言ってるわけじゃなかったりするのだ。ほら、同じ台詞でも本田やイチローみたいな人が言うと重みが違うじゃない。でもえすとえむは気持ちよく私たちを騙くらかしてくれる。気持ちを冷まさないように物語を読ませてくれる。そんなえすとえむのハッタリの名手っぷりが本当に心地よい。

 えすとえむはやっぱりすごい! 本当にこの人の作風は幅が広くてまだまだ底が見えないよなあ。また短編集も出してくれると良いのだけれど。もちろんおすすめ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-11-06 23:27:49] [修正:2012-11-06 23:27:49] [このレビューのURL]


Golondrina-ゴロンドリーナ と同じ作者の漫画

えすとえむの情報をもっと見る

同年代の漫画

月刊IKKIの情報をもっと見る