「hotkk」さんのページ

総レビュー数: 3レビュー(全て表示) 最終投稿: 2008年08月13日

[ネタバレあり]

 今時少し珍しいくらいのまっすぐさを持った青春ボクシングマンガ。しかし、原作者は元世界チャンピオンの竹原、そして編集者も元ボクサー、作画者はボクシング好きということで、とてもリアルに、主人公がボクシングを通して成長していく様が描かれている。

 主人公はケンカでは負け無しの16歳の少年、リク。家庭環境に問題があり、すさんだ生活を送っていたが、公園で出会った天才ボクサー・棚夫木に負けてしまう。初めは半ば道場破りのようにして棚夫木の所属するジムに押しかけたリクだったが、そこで出会った年上のボクサー、山本に温かい言葉をかけられ、少しずつ心を開いていく。
 一方、棚夫木は脳に問題があり、アマでは負け無しだったのだがプロテストを受けることが出来ない。誰にも負けたことのないのにプロになれない棚夫木は、棚夫木の才能に目がくらんだ所属ジムの会長に乗せられ、脳に爆弾を抱えたままメキシコでプロデビューしようとする。
 山本は棚夫木を心配し、棚夫木を止めようとするが、結果的にはリクが棚夫木の渡航を阻止してしまい、山本もリクもジムから出入り禁止になってしまう。
 棚夫木はボクシングのプロデビューを諦めて就職する。リクたちは棚夫木の影を心に抱えながら、新しいジムを作ってプロデビューするのだが・・・

 全体にセリフは少ないが、人物描写・作画が素晴らしく、私自身は、1話ごとにまるで心が洗われるような感覚に襲われた作品。ボクシングマンガにありがちな、単なる新しいライバルとの戦いではなく、主人公の力強い歩みに主眼を置いた構成に目を見張った。

この作品が連載誌ヤングサンデーの休刊により今後どうなるのかわからないが、個人的にはなんとしても構想されている結末までたどりついて欲しい作品である。

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[投稿:2008-08-13 12:57:27] [修正:2008-08-13 13:26:28] [このレビューのURL]

すばらしいです。

少なくとも私は人生観が変わるほどの衝撃を受けた。ストーリーそのものは、おそらく作者がマンガを描くことから半ば逃避して釣りにはまってしまった頃のことを描いているだけだと思うのだが、そもそもそんなことがここまで面白いということを知らしめてくれたことに感動した。

小さな小さな出来事の積み重ね・・・例えばうどん屋に入って、店の売り上げを心配しているうちに、むせてしまったこと。例えばバイクで釣りに行く途中、よそ見していて前の車にぶつかってしまったこと。こんな本筋とは関係ない(本筋などないが)どうでもよいことの積み重ねが、わざわざ描かれることによって、まるでこの世界全てを肯定しているかのように感じてしまう。

人生のバイブルとしてぜひ手元に一冊置いておきたい。


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[投稿:2008-08-13 13:22:11] [修正:2008-08-13 13:22:11] [このレビューのURL]

10点 茄子

黒田硫黄についてはとうの昔に各界から賞賛の声が上がっているのだが、作者がどうも体調を崩して連載が滞っているらしいので、いまさらだがこのタイミングでレビューを書きたい。

この作品の素晴らしさは、なんと言っても1話1話に凝縮された人生の濃さにあると思う。アニメ映画化された自転車競技の話はもちろんだが、農業をやっている元大学教授、家が借金まみれで借金取りに追われている少女。そしてそれらを巡って登場してくる脇役の人物たち・・・etc・・・登場するどの人物もがそれぞれに事情を持ち、それがコマの裏の裏辺りにしっかりと根付いている。一つのセリフも見逃したくない、一つのコマも見逃したくない、そういった緻密な世界観が、筆で描いているという見方によってはラフなそしてダイナミックな作画で生き生きと描かれる。さしてネームが多いわけでもないのに、もしかしたら読んで疲れるという人がいるかもしれない。それほど、1コマ、1言が、大きな意味を持った作品だ。

黒田硫黄作品を初めて知ったのはコミックキューに掲載された短編「あさがお」でだったが、その当時から作画及び台詞回しは卓越しており、私にはすこぶる衝撃的であった。その後も作品を読み続けているが、私が個人的に一番好きなのはこの「茄子」である(もちろんみんな好きだけど)。

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[投稿:2008-08-13 13:13:07] [修正:2008-08-13 13:13:07] [このレビューのURL]

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