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総レビュー数: 17レビュー(全て表示) 最終投稿: 2005年11月09日

8点 蟲師

日本。
日本という国土に生まれて、やっぱり幸せだったな、と思えた漫画でした。
動物よりも植物よりも原生生物に近い不思議な生命体「蟲」(\"虫\"とはほとんど似ていない形をしています。虫嫌いの方はご安心を。カタツムリはいたけどね。)、それの専門家が「蟲師」で、主人公のギンコも蟲師の一人です。この作品は一話簡潔の短編集に近い内容になっています。
まずは世界観の素晴らしさ。作者曰く「江戸と明治の間にもうひと時代ある感じ」。描かれる舞台は、緑深い山奥の静かな一軒家、からぶき屋根の家々が並ぶ雪国、漁師達が暮らす静かな漁村の町――と、「ちょっと前まであったような日本の風景」です。強引なコマ割りは無く、物語も\"静かに\"展開していきます。その傾向が顕著に出ている第一話の素晴らしさは特筆すべきものがあります。風の音、水の音、床の軋みが聞こえるような、BGMの不要なこの「静かな世界」に一気に引き込まれました。着物、茣蓙、筆、日本酒、杯、行灯、蚊帳、刀・・・、一切「やかましい」シーンなしに、独特の空気観で1ページ1ページが彩られています。こんな風土を持った国に生まれたことを誇りに思いたいです。ハガレンもジャンプ系漫画でもいいけどさ、この漫画は真っ先に世界に輸出すべきですよ!世界中に、「日本はこういう風土を持った国なんです」と誇りたいですよ!
この「蟲」という存在も、なんだかいい。敵ではないし味方でもない。「お互い生を遂行している」存在。この「共存」していく対象として見ている、人間と、蟲師と、そして蟲の微妙な関係は、太古から自然を尊重し、協調し、守りあってきた日本人の姿を映しているようにも見えるのです。タヌキに化かされ、いるようないないような微妙な生き物たちが存在していた「ちょっと前の日本」。これははたしてファンタジーなのでしょうか。どこか懐かしささえ漂う、「日本の原風景」そのものを映し出しているような気がします。
日本古来の様々な慣習、伝説、故事に着想を得たと思われる短編一本一本それぞれ違う世界観を持っており、様々な物語を展開してくれるのですが、物語自体はツメの甘さというか、「え?だったらこうなるんじゃないの?」的な、成熟しきっていない脚本であることが顕著に出てしまっているのが残念でした。もともとあまり物語自体を作ることは上手くない方なのかな?着想はどれもいいんだけどなぁ。アイデアで止まってそこからのツメが甘いものが多かったように思えました。
それと、あまり関係ないことかもしれないけど・・・。今回僕は予算の関係で(笑)一巻しか買えなかったのですが、そこに収められていた5つの短編の作品順が見事でした。ミュージシャンのアルバムを聞いているような、交響曲を最初から聴いているような・・・。世界風景もかぶらないように並べられています。そして本のラストは、壮大な「命の終わり」を描いた物語になっているのです。山から海へ。命が始まり、そして終わる。山の奥深くから始まったこの本は、最後には「母なる命の源」である海で静かに終焉を迎えるのです。この話に出てくる漁師たちもグッド。本当に、かつて日本に生きていた「原風景の日本人」たちで、そのイキの良さや力強さは、懐かしさも通り越して勇気を与えてくれるような気がしました。
そんな具合にこの本を弟に見せてたのですが、読み終えた弟は一言、「これ、ブラックジャックじゃん」と・・・。ガックシ・・・

ナイスレビュー: 1

[投稿:2006-11-19 21:05:42] [修正:2006-11-19 21:05:42] [このレビューのURL]

映画の方からこの漫画を知りました。いきなり関係ありませんが僕は映画が大好きで(笑)、「この卓出した映像センスは原作からも来てるのかな?」と楽しみにしてました。いやー!これは原作の力だ!「ずば抜けてんだよ、センスがっ・・・ハンパじゃねえっ!」
とにかく、凄すぎる絵。いまだかつてこんなに絵がうまい人は見たことが無いです(上手(じょうず)にあらず)。トーンをほとんど使わずペン1本で描かれた、陰影のハッキリとした独特の絵柄。パワフルな「空気の動き」までも見えます。さらにはタダモノではない、\"映像的\"を飛び越えたアングル、コマ割り、切り取り方・・・。漫画を読んでいるというよりは「映像体験」させられているような錯覚にさえ陥ります。特に漫画史上における金字塔の対決ではないかと思われる「星野VS風間」戦は最も気合の入った作画になっており、紙の中に飲み込まれそうなほどの圧倒的な迫力!もちろん作画だけではなく、挫折と栄光と苦悩を鮮やかに書き上げたストーリーに、磨き上げられたキャラ造形、随所に挟み込まれているユーモア・・・いずれもかなり高レベルでまとまっています。
ストーリーについて、もう少し。才能はあるのにやる気が無い月本が最初のメーン主人公ですが、彼が目覚めていくうちに、次第に主人公は星野にスライドしていきます。この二人のシーンごとの心情変化が非常に巧みに書かれており、展開も「ムダ」なシーンやわき道にそれるようなコトもほとんどなく、相当計画された上でのシナリオなのだなと思えました。また、二人だけではなく魅力的なサブキャラクターたち――挫折を乗り越えて\"役目\"を見つけるチャイナ、「飛べない鳥も居る」と苦渋の末に卓球を諦めるアクマ、最強ゆえの苦しみの果てに、最後に星野によって解き放たれるドラゴン(風間)・・・、さらにはコーチ陣の「バタフライ・ジョー」と「オババ」も加わって複雑に絡み合い(いや、ある意味単純?)、ふたりの主人公を盛り上げます。特に僕は佐久間(アクマ)にどーしても感情移入してしまって・・・ゲホゲホ。兎に角もこれらキャラクターたちの性格付けがいずれも強烈で、それらから放たれる痛快なセリフもこの作品の魅力です。セリフは最初から最後まで見事でした。日常生活で使ってしまいそうです(笑)
とはいえ単純には「スポ根」モノであり、シナリオも、陳腐と言われてしまえばそこまでという面はあります(笑)。しかしそれでも、「やっぱり、いい」と思える、これらのキャラクタ、シナリオ、そして\"映像\"。チャンスがあればぜひ手に取っていただきたい漫画です。この独特の絵柄、良い意味でも悪い意味でも、途中から慣れます(笑)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-11-19 21:04:28] [修正:2006-11-19 21:04:28] [このレビューのURL]

友人曰く「ギャグマンガを根底から変えた」一品だそうで。
さぁ、どう書いたものか。
・・・というほど、紹介が難しいマンガです。もう初期設定とかストーリーとかを書くにはアホらしすぎる作品なのでもうここでは触れませんが(笑)、とりあえず、リクツとかほっといてギャグに突っ走っている作品です。最初の数話を除けばほとんど短編で、「何―――!!」ってくらい短く感じるほど(笑)一コマ一コマにギャグが凝縮されていて、テンポも悪くありません。この、「何―――!!」がギャグの根底のようで、様は、「なぜ!」「どうして!」を自然に叫びたくなるような理不尽極まりない行動、言動、そしてそれの持つ圧倒的なパワーがこの作品の原動力になっています。その「パワー」が本当に凄い!誰も突っ込む間もなくどんどん引っ張り込んでいき、ついてけないほどの爆裂的なエネルギーが、読者の理性を吹っ飛ばしてひたすらに笑わせてくれているような気がします(「さばの味噌煮!」で死ぬかと思った(笑))。その「針が振り切れたテンションの維持」が、なかなかけっこう上手く行っているので、数巻読んでもその衰えの無さには驚かされました(まぁ、でもやっぱりセクシーコマンドーの設定が消滅する4〜5巻あたりから陰り始めるけど・・・)。
なぜか、なぜかなのですが、このマンガの一番の凄い所は、ギャグが「わざとらしくなってない」ところかなぁと感じたり。どんなに上手いギャグマンガでも、どこか「あ〜、笑わそうとしてるなぁ・・・」だとか「気を吐いてるな・・・」とか思ってしまう瞬間はあるものですけど、このマンガは、少なくとも3〜4巻くらいまでは発生しない!(笑)。ヘンな例えだけど、登場人物が一丸になってマサルさんの大ボケを御輿上げていってるような感じ。「わっしょいわっしょい
」が聞こえてきそうな(笑)、ある意味でのお祭り騒ぎ的な、マンガ?
う〜〜〜む・・・、本当にこのマンガは紹介しづらい・・・(笑)
とりあえず、万人にウケるギャグではないと思うので、そこはご注意を。ヤミつきになる人と極端に嫌う人が居そうだなぁ。僕はどっちでもなかったけれども。とはいえなかなか面白かったです。この支離滅裂なレビューに、あと一言だけ書くとすれば、 あ の 最 終 回 は ダ メ だ と 思 っ た 。 

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-11-19 21:03:15] [修正:2006-11-19 21:03:15] [このレビューのURL]

悪夢のような内容だった(笑)イノ○ンスの所見から一年。ようやく原作を読む機会を得ました。複数のエピソードからなる本作の舞台は2029年の日本。ネットやサイボーグ、AIやテロリズムから発生する様々な犯罪を防衛する「攻殻機動隊」の活躍を描いた作品です。
まず、こーれは完全に誤解していたのですが、結構エンターテイメントに仕上がっていたのは驚きました(笑)ヤッパリイジョウナノハイxセンスダケデスネワハハ!!やっぱり難解な舞台設定(というか、無理矢理こんがらがせようとしている作り方にも感じたり・・・)や場面転換などは頭の悪い僕には(笑)ついてけない部分も多かったので、そこは勿論マイナスですが、それでも意外な黒幕や緊張感あるアクションシーン、時折挟まれるギャグ(というよりユーモア、かな?)も面白く、エンターテイメントであるマンガとしては十分成立していました。ドラマチックな息の詰まる展開はなかなか捻られていて、様々な意味での「近未来」を現実に即した形で上手く描き出されていたと思います。
驚いたのは、このマンガの初版は1991年、連載開始は1989年だったこと!現在では一般的なネットワーク、情報化社会、人工樹脂やAIなどなどの多くの設定は今読んでもまったく色褪せていません。この筆者の先見性の高さは高く評価できるのではないかと。この作品で取り上げている多くの問題は、決して今では過去のものとなったものではありません。素子やバトーたちが遭遇する、現代社会、あるいは「このまま進んだ先の未来」が引き起こしかねない事件、事故には、15年前から発せられていた作者の警告とメッセージが込められていました。決して架空のSF設定として無視されてはならないほどの世界観の完成度の高さはもちろん、決して「設定厨」にならずにある程度消化できていた点も「おー、いいじゃん!」なんて思えたりしました。
今はもうこの作品は「古典」と呼ばれてるのかな。読む前に抱いていた「15年前の\"オタクたち\"が好きだったマンガの最前線」って偏見はあながち間違ってはいなかったけど、それでも・・・。「オターな人がぎゅんぎゅん反応しそうなマニアックなメカや舞台設定」と「情報化、ハイテク化の波に飲み込まれていく現代人へ、静かに語りかける『人間という存在』へのメッセージ」というテーマの両立(後者が弱めなのは否めないけど)。「ああ、きっとこの奥の深さが15年たった今でもファンを離さないんだろうなぁ。」とジンワリ思えたりもしました。僕は「オターな人が反応しそうな・・・」には全く反応しない人種ですけどね・・・
エログロもぎゅんぎゅんなので万人にはオススメできませんが、まぁ、上の文章を読んで「おっ」と思った方は手に取っとかないと勿体無いかな。少なくとも、「俺これ大好きなんだよ!」って言ってたリアル友人には「良かったよ!」と笑顔でこの本を返却したいな。P146の部長さんのセリフにしみじみしました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-11-19 21:02:15] [修正:2006-11-19 21:02:15] [このレビューのURL]

小さいときに父親は病死し、溺愛してくれた母親も事故死してから数ヶ月、親戚の迷惑をかけまいとテント生活をはじめていた透(女)が、美男子(笑)一家にひょんなことから転がり込むところから物語は始まります。ところがこの一家は、異性に抱きつかれると一定の動物に変身してしまう「十二支の呪い」に取り憑かれていて・・・
最初こそ「アホか!」と思っていた「十二支の呪い」だけど、この設定が何気に深いっ!この物語に出てくる登場人物たちは皆心の傷や痛みを抱えていて、それを受け止めることが出来ずにぶつかり合ったり、引き篭もったり、何かに執着したりしています。「でも違うんだ、それを受け止めるためには人に頼ったっていいんだ、甘えたっていいんだ」と、その人のすべてを暖かく受け入れ、包み込む行為、\"抱く\"。それを許されない人々の物語なのです。この一家は何かを大切にしたり、認めてあげることが苦手だけど、それって他の人も多からず少なからず持っていることなんじゃないかと。この「抱きしめる」というキーワードが凄く効果的に使われていて・・・ACのCMでも「抱きしめる、という会話」って文句があったけど、まさにそれ。その人の心にまで触れて、包み込んであげるその行為の重み。「弱くったっていいんだ、寂しがりやだっていいんだ。強がらなくてもいい、ありのままをさらけ出せばいいんだ」・・・そんなメッセージが全編に込められています。なんて、優しいんだろう。その人を大切にしたいと思う気持ちが、その人を助けてあげたいって気持ちが、こんなにも重く深く、揺ぎ無い支えになることが出来る。透が、そして草摩家の面々が、静かに語りかける言葉ひとつひとつに溢れんばかりの優しさが込められていました。痛みを受け止めて、抱きしめてあげられる人がいる強さ・・・。某アーティストの曲に「embrace」ってのがあるのですが、それをちょこっと思い出しました。登場人物設定もなかなか上手いのですが、特筆すべきは、主人公の透。大好きだったお母さんまで亡くして、不遇に不遇が重なる悲しい役なのに、なんであんなに明るく前向きに笑ってられるんだよぉ!「世界で一番バカ」な完全無欠の透の「愛おしさ」が、この作品を引っ張っていると思います。ただ、その「説教」にたどり着くまでにはもう少し手順を踏まないとなぁ、と感じる部分はありましたが・・・。良い事は言ってるのに、その言葉が伝えられるまでのプロセスにもう少し丁寧さがあれば、より違和感なく、唐突に感じずに受け入れられたと思います。
それ以外の部分だと・・・生徒会長のキャラがええわ(笑)それと「欲情すればいい!」に大爆笑したりとか(でもこの後すぐに紅葉の名シーンなのだから、このマンガはあなどれない・・・)。ただこれ、「ホームコメディ」かぁ?コメディ以上になんだか大きなものがあるけれど、あえてそっちを紹介文では否定して「コメディ」にしちゃってるのか・・・。重たいテーマを低年齢層でも読める少女マンガに上手くアレンジ出来ていると思うので、そっちを推せばよいのにね。
絵柄自体はだいたい2〜3冊で慣れましたが、やっぱり爪を紫色に塗っちゃうセンスが僕にはわかりませぬ・・・。とはいえ星5つまであと一歩ってくらいの見事な作品でした。女性はまずもちろん、男性でも手に取っても悪く無いんじゃないかな。最初に人から薦められた時に言われたとおり、「巻が進めば進むほど面白くなり」ます。ところで、メイドが出てきたり、コスプレが出てきたり、女装がいやに多く出てきたりとか、微妙にヲ同人臭がするのは何でだろう・・・?女性なら誰でも少なからず持っている願望なのかしら。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2006-11-19 21:01:05] [修正:2006-11-19 21:01:05] [このレビューのURL]

この作品は週刊誌連載ながら、1話1話がほぼ独立している短編群です。恋まっしぐらな時期の中学、高校生たちの様々な恋愛模様が描かれています。いやーもー、本当に「超王道中の王道」!何のヒネリもなく、ただひたすらにボーイズビーな(女性主人公もいますが)物語。しかも1話完結だから、どんなにドラマチックに持ってっても後の処理がいらない!(笑)ここまで王道を突っ切っていると、シナリオとしてどう評価できるかがすごく微妙・・・。下手に描いている印象は無いのですが、かといって特別「おぉ!」と来たエピソードがあったわけでもなく・・・。可もなく不可もなく、ってところでしょうか。
それだけに各物語はひたすらど真ん中の直球品ばかりで、スケール的には「これ膨らませれば映画一本撮れるよ・・・」なんてものも含まれていたり。必ずしもハッピーエンドで終わらない清々しさもなんだか良いのですが・・・う〜む、やっぱり個性が無いのかな、これ以上書く事が思い浮かびません(笑)恋愛漫画を本格的に見たのは初めてですが・・・僕には向いてないのかもしれないなぁ・・・

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-11-19 21:00:05] [修正:2006-11-19 21:00:05] [このレビューのURL]

とにかく変人極まりない「のだめ」と、硬派で専制君主な「千秋」を中心に様々な変人たちが入り乱れるマンガですが、ここで過剰に「クラシックマンガ」として期待していた自分は少々ガックリ。これは「ギャグマンガの形を借りたクラシックマンガ」じゃなくて「クラシックマンガの形を借りたギャグマンガ」なんっすね・・・。「クラシックを知らない人が読んだらクラシックが好きになれる」けど、「クラシック好きがクラシックマンガとして読む」には、だいぶ肩透かしを食らうと思いますので、ご注意ください(笑)
もちろん、だからといってクラシックの描写が悪いわけではなく、むしろ見事な出来で、これは多分マンガじゃなければ表現できないものなんだなーと思ったり。音が一切聞こえない\"マンガ\"というメディアを逆手にとって「現実じゃなかなか表現できない素晴らしい音楽」を描写する手法。「鍵盤ハーモニカで始まるラプソディ・イン・ブルー」とか「ド派手パフォーマンスしちゃう葬送行進曲」等、分かる人にはわかるネタ(笑)から、特に見事だったラフマニノフのピアノ協奏曲第二番(ピアノが無茶苦茶難しいことで有名)を千秋が演奏しきる場面まで、「音じゃない手法で奏でられる」大迫力の演出はこの作品の大きなポイントかな、と。(でも全体的に演奏シーンが少ない・・・)
とはいえギャグマンガなので、やはりそちらが本腰。少年漫画的なギャグしか知らなかった自分は、最初「笑わせ方」に違和感を覚えましたが、二度三度読んでいると次第に病みつきになりそうな感じで、登場人物の95%以上が変人ばっかっちゅー素晴らしい(笑)キャラクター設定で物語をぐいぐい引っ張っていきます。すんごく千秋がカッコつけてるシーンのセリフが「さらばこたつ・・・」ってノリとか僕好みなんですけど・・・うーむ、これはただの僕の主観的な好みですが、イマイチ主役二人のキャラが好きになれない・・・。人の弁当掻っ攫って「セーンパーイウフフフ!!」なのだめも、全体通してずいぶん柔らかくはなるけどやっぱりドきつい千秋も、なんだかなー・・・。この作品が好きになれるかは、「のだめが好きになれるか」が分かれ道になってるかと。タイトルは「のだめカンタービレ」だけど、実際に成長してるのは千秋だけだし・・・(6巻まで入手して読みました)。こーゆーのは少女ギャグマンガの特徴なのかな・・・。繰り返すように自分の主観的な好みに過ぎませんが、そこが「☆四つが取れる実力を持った作品」がギリギリで☆三つになっちゃった原因かなぁ。
この作品のテーマは「一番の変人は千秋なんだ」ってコトなんでしょうね。キャラそれぞれ強烈な個性があって、イラつくしぶつかるし否定したくなるけど、それでも真っ直ぐに音楽へ向かっていく登場人物たちの姿を見ていると、「一番ヘンなのは、この中でただ一人ヘンじゃない千秋なんじゃないか」なんて思えてくるあたり、なんだか不思議な感じ・・・見事でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-11-19 20:59:16] [修正:2006-11-19 20:59:16] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

今(ちょっとブーム去りぎみだけど)時代をときめく存在の「オタク」。このマンガは、もう、まさしく「ヲタのヲタによるヲタのためのヲタ漫画」です(笑)恐ろしく濃いです。咽ます。
引き篭もり四年目の主人公が、隣の部屋のオタクな後輩と知り合ってエロゲーを企画しようとしたり、唐突に出会ったいわゆる「美少女」とのアリエナーイ(笑)交流をしたり・・・そんなマンガです。この作品中で出てくるモチーフは、宗教、クスリ、エロゲー、秋葉原、メイドカフェ、ロリータポルノ、マルチ、自殺オフ・・・と、もう普段なら絶対お目にかかれないアングラな世界が、一切薄めない原液のまんまで呈示されてきます。誰でもこれは圧倒されます(笑)引き篭もりの佐藤やオタクの山崎の行動や言動もなんだか「それっぽい感じ」にリアルで、「脳内でバーチャルに復讐するんですよ!」等々のキてる感じなセリフが飛び出したり・・・。
問題は、これがまったくもって茶化してる以上に残酷なものに見えてきてしまうことです。オーバードーズや合法ドラッグ、自殺オフ等、笑えないネタに対しても配慮無しというか、モラルに欠けるというか・・・ともかくもジョークに関してはやりすぎ感があって、時には不快に。「何が言いたいんだ!」って状態になることもしばしば。他、全編を通したテーマが、結局は「引き篭もりを無くす」ぢゃなくて「オタク万歳!引き篭もり万歳!」だったりと、なんだかオタク同士の内輪ウケを狙っているような印象がどうしても付きまとってしまっています。「オタクたちの姿を通じて、非オタクな人々に何を伝えられるか」が勝負なのでは?ここで内輪ばっかりで売り上げ伸ばしても、この面白いテーマが生かしきれない・・・。
あえてテーマを挙げるとすれば、佐藤が岬に対して精一杯ココロを開こうとするあたり?山崎が散々理論で固めた「本物の女のどこが良いの?」論が一言で崩れ落ちる様とか・・・。どーしようもないオタクでも現実の女への性欲が捨て切れてない。結局はどんな人間だってニンゲン。死ぬのは怖いし、やっぱり希望にはすがってしまう。そんな弱っちいヒトの姿が時折垣間見れる描写があったのは好感ではありましたが、やはり少々ステレオタイプに嵌りすぎてたかな。クサかったです(笑)
そんなこんなで、オタクの欲望をどこまでも書いた本作。岬がオタクたちの究極の理想像として描かれているあたり、きっと岬には「オタクが作り上げた幻の存在なんだ」みたいなオチが来るのかな、と、何となく僕は予想できてしまうのです(違ってもいいや、たぶんこのマンガは読み返さない(笑))。ともかくも、普段絶対お目にかかれない、\"真の\"ヲタクたちの世界を垣間見れたような気がします。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-11-19 20:58:13] [修正:2006-11-19 20:58:13] [このレビューのURL]

10点 ぼくんち

幸せって何だろう?大切なものって何だろう?
何で人は一人では生きられないんだろう?
こんな疑問に対して、特に最近の人は孤独主義的な回答をする人も多く、実際僕も「人は一人で生きていくものだ」なんて思ってはいました。いろんな人に助けられながら、それでも孤独な道を行くのが人生だと思っていました。
この作品で、その価値観が引っくり返りました。
物語は、日本のどこかの貧しすぎる港町。三年間家出していた母ちゃんが、主人公の一太と二太のところへお姉ちゃんを連れて戻ってくるところから始まります。出てくる登場人物全員が、もうどうしようもないくらいダメダメで貧しい人たちばかりで、その貧乏っぷりが、まるでノンフィクション?ってくらいのリアリティ(新幹線の改札のつり銭を獲ったり、走行中のバスに飛び込んで慰謝料を「ボーナスボーナス♪」と喜んだり、駐車場の車からガソリン盗って売り払ったり・・・)。ヤクや賭け事やセックスが横行してるムチャクチャな舞台設定は生々しく、「昔」の話ともとれるし、また「未来」の話とも取れるあたりに、この作品の強烈な、ある意味で\"普遍性\"を感じたりしました。
しかし、そんな最悪の舞台設定の中でも、一太や二太は様々な出会いや別れを通じて、色んな間違いをしながらも、やがて少しづつ成長していきます。ワルの\"こういちくん\"の所へ弟子入りし、多くのことを学んでいく一太兄ちゃん、「辛いときこそ笑うんだ」が信条の\"姉ちゃん\"とともに生活しながら町の人たちを見つめていく二太。ヤク中の父ちゃんの世話をしながら、やがて笑顔で運命を受け入れるさおりちゃん、街一番の長老の鉄じい、一太との切なすぎる逢引を共にした\"浜辺のルリ子\"・・・他、挙げればきりが無いほどに様々なエピソードが描かれ、そして儚く消えていきます。どのエピソードをとっても、人間の人生とか儚さとか優しさとか暖かさを、物凄い説得力を持って語りかけてきます。
終盤、登場人物たちが最後に選んだ道もひとつひとつが暖かくて切なく、人間的に大きな成長を遂げている姿は感動的で、表紙一つとったって、一巻→三巻までに表紙に描かれている人物がだんだん減っていくアレを見ただけで、もー物語の展開を知る人は涙無しには直視できないと思います(しかも笑顔・・・)。成長していく、生きていく、そして死んでいく・・・壮大な\"人生列車\"。これからもこの世界は続いていくし、受け継がれるものもあれば、そこで途絶えるものもある。だけどそれでも、人間が生きている以上、決して無くならないものがある。現代の裕福な人間が失ってしまった「幸せ」の真実の意味を、この作品は圧倒的な力を持って呼び起こしてくれました。「泣くことは悪いことじゃない、感情表現なんだから泣かなきゃ損だ」なんて言ってた友人よ、これを読み終えても、まだそれが言えたら「図太いね」って小一時間問い詰めてやる。愛って何だっけ?家族って何だっけ?優しさって何だっけ?人が死ぬって、どういうことだっけ?・・・そんな重たいテーマに、ひとつひとつ丁寧に答えが出されていき・・・(でもクサくないのが凄い。本物の持つ説得力だと思う、これは。)人間は生きていく、続いていく、終わらない物語―――。壮大な人生観。「ずっとずっと愛し続けよう」という言葉の重み。・・・いくらでも言えちゃう位、この作品は、もう、本当に・・・優しさに溢れているのだと思います。
紛れも無く、後世に語り継がれるべき傑作であることは間違いありません。対象年齢はだいぶ高いですが・・・

ナイスレビュー: 1

[投稿:2006-11-19 20:56:48] [修正:2006-11-19 20:56:48] [このレビューのURL]

パーフェクト。「平成のサザエさん」になりえる(笑)、日本人のスタンダード・コミックにもなりえる、紛れも無い傑作です。

このマンガは、夏休みの初めの日に引っ越してきた「とーちゃん」と「よつば」が、近所の人たち(特にお隣さん)を巻き込みながらも、実にだらだらと「なんでもない日」を過していくマンガです。幼稚園〜小学校低学年くらいの年齢で好奇心旺盛なよつばは、田舎っ子なのか海外っ子なのか、都心から外れた住宅地の何もかもが発見で、ブランコからクーラーまで知らないものばかり。些細なことでもよつばの目には夢のような世界が広がっていて、何でも不思議で、何でも楽しくて、毎日元気に走り回っています。その「ちっちゃい子ならでは」の無邪気な行動が何から何までがなんだか微笑ましくて、テキトーにどのページを開いても顔がほころびます。設定では「変わった子」なんてなってますけど、僕は子供ってアレぐらいでいいんじゃないかなって思えてしまいます。雨にわざと当たって「おーすげー!」とか、鳥よけの風船を怖がったりとか(僕も子供の頃怖かったです)それってきっと人間として純粋なことなんじゃないかと。周りの大人や子供たちもどこか素朴で、人間味溢れています。2巻からギャグもパワーアップし、クスクスからゲラゲラになることもしばしば。登場人物の瞳が心情でコロコロ変わるのもユニーク!最後にいたっては「あー、人間っていいなぁ」って思えてしまうほど(笑)
・・・そうやって読んでいると、なぜだかノスタルジックな世界に引き込まれるような気がするのが不思議です。書かれている話は「買い物」に行ったり、些細なイタズラをしたり、挙句の果てには旅行のお土産を配ったり等、本当に日常のなんでもない姿です。だけれど、それもよつばの目からは発見だらけで、そして楽しくてしょうがないものに見えてくる。どうでもない日常もマンガとして見事に描かれる。ふと時折、「果たして現代人は(自分も含めて)毎日をこんなに楽しめてるだろうか」なんて考えてしまうのです。プールの監視員の上るイスから見た世界も、トラックの荷台から見る世界も、今の私たちは忘れかけてる。ケーキ屋さんに入ってたくさんのケーキを見たときのあのトキメキも、デパートの陳列棚が面白くって駆け回っていたあのトキも、今は感じなくなってしまったことです。たしかにそれが「大人になる」ことなのかもしれない。だけれど、忘れてはいけない事なんじゃないかと。見方が変われば世界も変わって、退屈で倦怠な毎日もなんだか違って見えてくるはず。大人になったって、「すっげーおもしろかった!」って言える出来事を見つけたっていいはず。「朝飯が美味しい!」ってことは、実はものすごい幸せのはず。マンガ中の言葉を借りるなら「何もないが、ある」。今ある平凡だって永遠じゃないし、だからこそ現実は楽しい。そして切ない。夜が更けるまで遊びまわったあの頃は、夜寝るときに明日が楽しみで仕方が無かったはず。今は?・・・そんな深い、深い、そして重たいテーマ。「大きくなると忘れてしまう\"何か\"」を、このマンガは持っています。「本当になんでもない日だって、マンガになるんだ」ということを問いかけてくる全編に通じるテーマには深く共感できました。
たしかに「このマンガはつまらん!」という人はいると思います。でも、できるだけ多くの人がこの\"笑い\"が分かる日が来たら・・・なんて考えてしまったり。多分このマンガは夏休みの終わりとともに終幕を迎えるでしょう。そんな、たった一ヵ月半の\"永遠の時間\"を精一杯駆け回る、よつばと近所の方々。暖かくて、どこか切ない。
不満点がふたつ。ひとつはとなりんちの綾瀬さんが庶民にしてはだいぶいい生活をしてること。この場合は裕福層にしないほうがいいのにな・・・それともう一つ、どんなにこのマンガをベタボメしても許せないのが、ちょっと大判だからって、一冊630円は高い!(笑)

ナイスレビュー: 2

[投稿:2006-11-19 20:55:48] [修正:2006-11-19 20:55:48] [このレビューのURL]

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