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総レビュー数: 6レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年06月21日

 戦後の混乱期の中、苦しみや悲しみを乗り越えようとして立ち上がる日本。そんな時代に存在した「女子プロ野球」。
 その中で主人公は女子プロ野球の選手として奮闘する。
 いや、何がしかを文章で説明するのはナンセンスかもしれない。
 だが、確実に彼女の生き様に感動することは間違いがない。
 最後にひとつだけ。
 この作品を読めば、この世で一番速い球は「時速160キロメートルの直球」ではなく「魂のこもっている、それだけで熱量を発しているボール」であるということが分かる。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-21 20:48:40] [修正:2010-06-21 20:48:40] [このレビューのURL]

 この作品の偽史的な想像力には脱帽するばかりである。 
 戦後最大の激動期である1968年を舞台に物語は進行していくのだが、その当時の主だった出来事の人物が相互にリンクしあい、独特の世界観を形成している。故に無論、予備知識がなくとも面白くは読めるが、偽史的想像力という観点からの面白さは多少の予備知識が必要かも知れない。だが、むしろ予備知識を持っていない状態で読んでみて「1968年」の入門書として有効に活用できる可能性がある。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-21 20:38:25] [修正:2010-06-21 20:38:25] [このレビューのURL]

 本作は中村明日美子の真骨頂的作品であろう。
 とにかく、単行本の装丁に惹かれた人は購入してみるべきだろう。装丁からはみ出してくる世界が読めば濃密に読者の精神を覆い尽くす。
 サイコ・サスペンスというジャンルだが、まだ一巻しか刊行されていない段階では、この観点からの評価は難しい。
 だが、この作品に漂う耽美的世界観はまったく見事である。これは文章で説明するのは難しいのだが、作中の世界観を見事に掌握しきる、中村明日美子の画風には脱帽を禁じえない。
 とにかく、要チェックである。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-21 20:24:11] [修正:2010-06-21 20:25:20] [このレビューのURL]

 漫画の分析、批評においてこの作品の右に出るものは中々無いだろう。
 この作品はかなり漫画業界や漫画の創作作業を鋭利に抉っている。少なくとも表現を志すにあたってこういった作品に触れるのも中々に有用であると思う。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-21 05:24:32] [修正:2010-06-21 05:24:32] [このレビューのURL]

 少女マンガの金字塔たる「ガラスの仮面」には、圧倒的な力があるだろう。
 漫画としての完成度は、各方面で言及されているだろうから、もう少し違った視点でこの作品を紹介してみたい。
 というのもこの作品は「演劇入門」としてかなりの有用性があるからだ。 スタニスラフスキーシステム、あるいはその発展形であるマイケル・チェーホフメソッドの実践的な方法がかなり平易に描かれている。主人公である北島マヤはマイケ・ルチェーホフメソッド的、そのライバルの姫川亜弓はスタニスラフスキーシステム的なアプローチを用いている点にも注目できる。双方のアプローチを比較対象にしながらお互いを検討している点にこの作品の他作品には無い独自性を伺える。故に、ある程度演技の経験のある人にとって、演技へのアプローチを検討する手法として参考に耐えうるものであるし、これから演技の世界に足を踏み入れる人にとっても有用だ。
 また、この作品に表れている劇中劇の演出手法もかなり多岐にわたって紹介されている。新劇からアングラまでの各種様々な方法論が紹介されており、演出の入門にも最適だ。
 さらに、この作品に描かれている各種様々の試みは劇団の組織論さえ説いている。
 この作品はこれから役者、演出家、劇作家となる人や、これから劇団を旗揚げするに当たって重要な点をかなり抑えている。
 ただこの作品の欠点として唯一挙げるなら、やはり演出家以外のスタッフの視点を欠いている事だろう。照明家には照明家なりの、音響家には音響家なりの演劇観というものがあり、それを描くこともまた必要である。何しろ「舞台は石垣」なのだから。
 故にこの欠点を差し引いて9点と評価する。無論今後の展開で、10点になる可能性は十分にある。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-21 05:07:25] [修正:2010-06-21 05:07:25] [このレビューのURL]

 この作品は福本伸行の真骨頂として捉え得る作品であろう。
 無頼伝涯などの過去作でも示されたとおり、どうやら福本氏は、心理的戦略的駆け引き自体を描くというよりは、苦難(黒沢の場合は孤独感や人望、将来の無さ等)の中で、主人公が立ち上がりある種のカリスマ性を獲得していき、強大な敵を打倒するということを描きたいようだ。言い換えれば一種の階級闘争である。
 故に本作品は福本的階級闘争を最もよく描ききった作品といえる。途中で打ち切りになってしまったのは至極残念である。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-21 04:36:11] [修正:2010-06-21 04:36:11] [このレビューのURL]

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