「ニシジマ」さんのページ

総レビュー数: 5レビュー(全て表示) 最終投稿: 2014年08月20日

9点 SLAM DUNK

整合性よりも突発的な爆発力と断片の豊かさ、言語性よりも視覚性に重きを置いた感覚が、躍動感を持って視覚的に物語を漫画の本質へと突き動かす。
次第に画力が伸びていく感覚が、桜木花道のそれと呼応するように、言葉ではなく絵として成長の過程と迸る才覚の現れを画面に露呈させている。
物語的なものではなく、視覚的なものに人は本作に魂を震わす。
この作品の世評の高さは、人が漫画を読書しているのではなく、鑑賞しているということを事実として指し示すエピソードとして、大変興味深いものが在る。

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[投稿:2014-08-20 14:00:05] [修正:2014-08-20 14:20:49] [このレビューのURL]

5点 BASARA

心理描写というものを主として言葉として処理する少女漫画の性向に首を傾げる。
漫画というものは概ねそういう風にできているのだから、という理由で許容していいものなのだろうか。
台詞での説明が先ず在って、それから画が付いてくる、という感覚で物語が進行していく。
漫画とは、そもそも視覚で見せるものであって、文字で読むものでは無いはずだ。
画面→言語という順序こそが漫画の醍醐味だと信じて止まない私にとって、これらの言語→画面という文学的順序を漫画に応用されては困る。
どちらの順序も間違っていないという見方もあるだろうが、文字だけで心理描写乃至物語が読者に伝わってしまうということは、とても危険なことだ。
全ての少女漫画がそうでないにせよ、少なくともこの漫画は文字だけ読んでしまえば、画面を見なくても物語が分かってしまうのである。
そして台詞で説明したものを、わざわざ視覚を持って重複的に親切に説明して下さる大衆迎合的な姿勢と演出法が、感傷という魔物を呼び起こし、人びとを外の感情へと投げ込んでいく。
大衆性を持つことを否定しない。読者を視覚的な想像へと解き放つことを拒むことが全く持って駄目なのだ。
優れた物語性を秘めているし、外の感情が揺れ動いたのも事実としてあるのだが、漫画の持つ言語的大衆性に警笛を鳴らす意味も込めて、5点とする。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2014-08-20 05:38:53] [修正:2014-08-20 14:09:11] [このレビューのURL]

6点 ヒミズ

本作を発表して以降、古谷実はこの路線を突き進むこととなる。
言語のみに捉われず、視覚的な試みに意欲的に挑んでいるため、物語は停滞しない。
青臭さを全体に匂わせつつも、志の高さで最後まで乗り切っている。
文字を読むことと、絵を見ることといった、漫画の持つ特性を読者に強要する感覚が素晴らしい。
強さと弱さを兼ね備えた、ギリギリの所を従来する秀作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-08-20 13:27:56] [修正:2014-08-20 13:27:56] [このレビューのURL]

巷の漫画作品に顕著な説明的言語性をすんなりと回避し、視覚的な漫画性に傾注した松本大洋の視座と筆致力に感服。
物語は物語らしく説明と感傷という大衆的魔物に侵されることなく、緩急自在の演出を持って本来的な漫画としての物語を屹立している。
画面の強さが物語的なものを凌駕した稀有な存在。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-08-20 05:07:20] [修正:2014-08-20 12:54:04] [このレビューのURL]

出来事に驚きがあり、視覚の強さが物語を引っ張っていく。
整合性よりも出来事の驚き、全体的物語性よりも個々のエピソードの良度が漫画を強くすると信じている。
どんどん整合性を意識するようになって、驚きが減っているのも事実だが。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-08-20 05:54:50] [修正:2014-08-20 05:54:50] [このレビューのURL]

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