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総レビュー数: 1レビュー(全て表示) 最終投稿: 2016年03月29日

[ネタバレあり]

911テロはこの作品の連載中に起こった。
それだけで新井英樹という作家の持つ同時代性がどれだけ優れていたかは明白だ。

例えばウェールズのバンド、Super Furry AnimalsのIt's not the end of the worldという曲の中にはこんなが一節がある(この曲が収録されたレコードは911の2カ月前にリリースされており、ソングライターのグリフ・リースもまた、極めて同時代性に優れた表現者だった)。

「すべての憎しみをモッキングバードに変えて空に放とう」

これもすごい表現である。
嫌味でもなんでもなく、僕なら絶対に言えない。

しかしTWIMにおける新井英樹は、いや、作中における強者は、上記に引用したような所謂欧米的なヒューマニズムに読者が救いを見出すことを絶対に許さない。
正確に言えば、それを許さないとする日本のいまの雰囲気を予言的に描いている。

「すべての悲しみをモッキングバードに変えて空に放とう」

何故そう言えないのか。それは僕が日本人だからである。と僕は思ってしまう。
そう歌ったグリフ・リースを何故すごい表現者だと思うのか、それは彼らがウェールズの人であって、アメリカ人ではないから。さらに言えばテロにあった当事者ではないからだ。

合衆国大統領であるダグウッドヘイズの台詞を「世界はあなたのもの」と捉えたか「世界はあなたたちのもの」と捉えたか、これは僕たち日本人にとっての踏み絵でありTWIMの本質だ。

点数の基準がよく分からなかったのだけど、人生に影響を与えたか与えてないかと問われたら間違いなく前者なので10点。
皆さん是非一気読みしてボロボロになって下さい。


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[投稿:2016-03-29 03:02:37] [修正:2016-03-29 03:03:01] [このレビューのURL]

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