「kenken」さんのページ

この漫画が他の高橋留美子漫画と一線を画しているのは、モラトリアムから脱却している点にあると思います。

うる星、らんまのように「るーみっくわーるど」と総括される世界があり、そこを舞台に毎日を楽しくドタバタと過ごし、新キャラは大抵誰かの関係者、その狭い人間関係内で誰かと誰かがいい感じになったりする。
このいつも変わらず安心できるテーマパークのような特徴は魅力でもある一方、閉鎖的、保守的なモラトリアムだとたびたび揶揄されてきた点でもあります。

このめぞん一刻は一見そういったいつものパターンを踏襲しているようでありながら、実は結婚という確実な終末が初期の段階から明確、という大きな違いがあります。
さらにこの漫画は連載時間と漫画内の時間が連動しており、キャラは歳をとります。ここも他作品と大きく違う点です。
21だったヒロインは最終的には28になり、ダメ学生だった主人公は物語が進むにつれ明確に「成長」します。
この漫画は結末に向けての二人の成長物語でもあるのです。

この漫画の最終回を読み終えた時、ずっと続くはずの物語が完全に終った事を告げられ、読者はここで強制的に作品世界から追い出され、莫大な喪失感を抱えます。
それは一刻館というよりも、この漫画そのものがモラトリアムだったからだと思います。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2008-07-17 23:31:41] [修正:2010-06-05 18:06:53]