「とろっち」さんのページ

主人公は祖父譲りの強い霊感を持ち、霊的なトラブルによく巻き込まれますが、
彼は退魔などを専門としていない一般人であり、基本的にはただ「見える」だけ。
妖怪や霊の類と戦ったり、逆に仲良くなったりするのではなく、
あくまでも畏怖の対象として描かれている点が良いです。

伏線が効果的に張られたミステリー仕立てのストーリーと、繊細で艶やかなタッチの幻想的な絵柄。
作品の雰囲気は、時にシリアスに、時にコミカルに、時にほのぼのと。
しかしその裏側には、気を抜けば引きずり込まれる恐怖が常に存在しており、
生と死が隣り合わせで身近にあることを感じされてくれます。

和の美しさ。迷信の怖さ。伝統の大切さ。そして人の思いの強さ。
恐ろしい話も、心温まる話も、考えさせられるような話もあり、
読むごとにじわじわとその面白さが伝わってくる良作です。
ちょっと読んだだけではこの作品の良さが伝わりにくいのが残念。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-03-28 17:29:52] [修正:2010-03-28 18:15:36]