「とろっち」さんのページ

民主主義はもういらない あなたのための全体主義

国民クイズは、国政にあなたの意見を反映させる唯一の手段。
優勝者の望みは国策となり、日本国政府がその威信をかけて叶えさせる。
どんな願いでも構わない。だって勝者は絶対だから。

国民クイズの司会を務めるK井K一は、国民を熱狂させ、支持率98%を誇る、言わば国民的スター。
輝かしいポジションにある彼だが、実はクイズの敗者であり、強制無償労働で司会をさせられていた。
司会をしていないときは拘束着を付けさせられ、独房に収容される日々。
そんな彼の本心は、彼にしかわからない。

この作品がマンネリ化に陥りそうな感じになってきたとき、話が大きく動く。
反国民クイズ体制派が他国と共謀し、革命を企てる。
K井K一の別れた妻、そして残された娘を巻き込んで……。
日本は、国民は、どこに向かって動いていくのか。どこに向かえばいいのか。

とにかく単純明快な作品です。でも扱っているテーマははもの凄く深いです。
ぶっ飛んだ設定。妙なテンション。パワフルで、ストレートで、強烈なメッセージ性。名言たっぷり。
当時(あくまでも90年代初頭)の日本や世界情勢を皮肉った、でも現在にも通用する展開。
打ち切りになってしまったらしく、後半がドタバタで駆け足だったのが残念。
名作になり得ただけに何とももったいないです。
それも含め、人によって評価が大きく分かれるかもしれませんね。
個人的にはこんな時世だからこそ読みたい作品だと思います。 怪作。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-07 21:00:21] [修正:2010-06-07 21:33:00]