「とろっち」さんのページ

10点 まんが道

熱い。二人の真っ直ぐな気持ちが、とにかく熱い。
作り物の熱さではなく、作者の人生を表現した熱さ。 漫画に賭けた熱さ。 二人の友情の熱さ。

当時には珍しく漫画に理解があり、女手一つで育ててくれた母親。 応援してくれた級友。
温かい職場の同僚。 下宿先のおじさん。 トキワ荘の友でありライバルたち。
二人が学生の頃からずっと目をかけてくれた手塚治虫。
そして、作者(A先生)が 「尊敬する漫画家」 であり 「生涯の友」 と呼んで憚らないF先生。

きれいごとではなく、こういう1つ1つの出会いが、幸運が、努力があって、その積み重ねがあって、
励まされ、けなされ、悩み、喜び、迷い、切磋琢磨しながら、まんが道を突き進む。
その感謝の気持ちが、情熱が、作品から溢れんばかりに伝わってきます。

戦後間もない時代、漫画家になる方法もわからずに、がむしゃらに漫画を描いていた頃。
お互い進む道が分かれながらも、夢を諦めないで歩き続けた社会人時代。
上京し、狭い部屋の中で語り合った下宿時代。
仕事の厳しさを知り、仲間の大切さを知ったトキワ荘での生活。
こうやって現在の漫画界が形成されていったのかと思うと、感慨深いものがあります。
自分も他のレビュワーの方と同様、A先生の作品の中でこれだけは別格です。 本当に面白いです。

漫画史に残り続けるであろう傑作。


A先生から亡きF先生への思いが温かいです。
「あいつは……彼は、ホントに天才でね。 僕はずっと「負けた!」って思っててね……。
 マンガ家っていうのは、歳を取るとだんだん子供から離れていくわけじゃないですか。
 それを50歳になっても、ずーっと「ドラえもん」を書き続けて……。
 「ドラえもん」は日本だけでなく、世界中の子供が読んで共感を得ているわけじゃないですか。
 あれは彼にしか描けない。 これは凄いことだと思うね。 やっぱり彼は本当の天才ですよ……。
 彼と何十年も一緒に活動したということは僕の誇りです。
 彼がいなかったら僕は絶対マンガ家になっていないしね。 現在もなかったと思うんですよね。」

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-07-27 00:22:05] [修正:2010-07-27 22:51:11]