「とろっち」さんのページ

毎週木曜日の放課後のみに出現する保健室。そこでは学校を卒業するための特別授業が行われる。
選ばれた者だけが受けることができるその授業とは、夢の中で、ある物を奪い合うこと。
現実世界での心の歪みを投影した異形の姿で現れる生徒たち。 本性を剥き出しにして争い、戦う。
そうして試練に勝ち抜いて卒業できた者は、皆の記憶からその存在が消えてしまうこととなる。
「卒業」 とは一体何なのか。 そして授業を受ける者の空にのみ現れる 「黒い月」……。

これは予想以上に面白かったです。
自分がこういう先の読めないミステリーやダークファンタジーな雰囲気が好みというのもありますが、
謎が謎を呼び、それらが終盤ですべて綺麗に収束されていく構成は、息を呑むほどの見事さ。
広げた風呂敷をここまで見事に畳みきった作品は他にあまり記憶にありません。
伏線の張り方も素晴らしいです。読み直しの2周目に突入して最初っから度肝を抜かれました。

伏線をちゃんと回収すれば良作なのか、と言えば、もちろん必ずしもそうとは限らないですが、
ミステリー系の作品で全体をうまくまとめることは十分に評価の対象になりえると思います。
作者の「ほぼ事前のプロットの通りに(=思い通りに)進められた」との言葉にもあるように、
打ち切りも引き伸ばしもない、恐らくは特別待遇の中で描かれたこの作品。
連載当初から計算ずくで描かれたがゆえの完成度なんでしょう。少年誌では真似できないですね。

あとはもう好みの問題かと。
主人公のヘタレ具合や半陰陽のような設定を絡めた内容、そしてラストの展開が好みに合うかどうか。

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[投稿:2010-09-09 01:07:51] [修正:2010-09-12 10:57:27]