「とろっち」さんのページ

こういうのを名作と言うんでしょうね。 心からそう思える、そんな作品。

最初、作品に慣れるまではしばらく(数巻程度)かかってしまいましたが、
一度慣れたら作品の空気に完敗です。

話作りが本当に上手いです。
何でもないような出来事なのに、細やかな情景描写と濃厚な心理描写、見事な演出で
丁寧に丁寧に紡いでいって、珠玉のエピソードに昇華させる手腕。
単なるまったり漫画ではなく、人物の造詣からコマ割りに至るまで技巧が凝らされ、洗練された、
ベテランならではの卓越した筆致。
他の方のレビューにもありますが、ラストの締め方が抜群に上手いので、読後の余韻が素晴らしいです。

そよの一人称と三人称とが交互に織り交ぜられた形で話が進み、そよ以外の人の心情については
推し量るしかないような構成になっていますが、その描き方、バランスが何ともまた絶妙。
静かな村、のんびりとした時の流れ、それでも少しずつ確実に変化は訪れるわけで、
色鮮やかに描かれたそんな田舎の空気に、読めば読むほど引き込まれていく作品です。

実はくらもち作品って絵が苦手なためにそれまで避けていたんですよ。
この作品の映画化に際して強く薦められたために読んだのですが、いま思えば感謝感謝。
万人受けするような作品とはちょっと言い難いような気もしますが、
波長が合った人にはたまらなくなるような作品であることは間違いないです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-10-09 13:21:08] [修正:2010-10-11 03:18:15]