「とろっち」さんのページ

自分の中の「面白い」という感覚が、世間が欲している「面白い」と一致するならば、
その才能は天才と呼ばれてもおかしくないでしょう。
頭の中にあるその才能を世に広めるには、「面白い」という漠然としたものを明確にし、
アウトプット(プロット、仕様書等)して具体化していく作業が必要になります。

しかし、話はそんなに簡単なものではないです。
今やゲームは日本を代表する一大産業。
大勢の大人が、何ヶ月、何年という長い時間をかけて作る、「商品」としてのゲーム。
他人との、他社との駆け引き、政治力、予算、締切、規制、流行、さまざまな要因が行く手を阻みます。
そしてそれらに振り回されているうちに、何が「面白い」のかわからなくなってしまう…。

「なぜ 作りたいものが作れない 作りたいから作る ただそれだけなのに」
「自分が感動してないモンを売って 他人の気持ちを動かせるほど オレは自信家じゃない」

いや、正直、前作「東京トイボックス」のときよりずっと面白くなっています。
やっていることは同じなんですが、全体の大きな流れ、うねりの中でストーリーが展開され、
世界観が広がり、より一層深みを増した心理描写。
この作品はどちらかというと、「生みの苦しみ」 をクローズアップしているように感じられます。
それぞれが弱さをさらけ出しているからこその、こんなにも人間臭くて魅力的なドラマ。

実際のゲーム業界の裏側という「現実」を描いているのかは正直わかりませんが、
個人的にはそこはどうでもいいと思っています。
読む人に説得力を与え、作品世界に引き込んでくれるような設定描写が巧みだからこそ、
「作品としてのリアリティ」が感じられる、熱い作品です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-10-22 00:36:39] [修正:2010-10-22 00:37:54]