「ITSUKI」さんのページ

短編集ですが、コマ割やモノローグの配置がとても上手で読みやすい上に、一作あたりのページ数が80-100Pあるのでどの話も強く印象に残りました。

「葦の穂綿」
普通の少女漫画ならごくありきたりなボーイミーツガールなラブコメに行きそうな導入に対し、明かされる彼の過去の重さ。その落差が凄いです。
決して結ばれない、報われない恋。ハッピーエンドなのかそうでないのか、胸が締め付けられる様なラストは少女漫画特有の感覚に思いました。

「半夏生」
タイトルや写真展の内容、またラストのモノローグといった伏線が利いていて好きな作品。
年上の女カメラマンと女装少年の禁断の恋、というのはどちらかといえば漫画チックな設定ですが、こちらは二人の再会のエピローグまでを描き切りハッピーエンドで締めている処がたまらなく良いです。

「冬霞」
児童虐待のトラウマが描かれます。
幼き双子と「おにいさん」の逃亡劇。
親に虐待されて生きてきた双子は連れ出された彼によって初めて愛情を与えられます。
なぜ家に押し入ったのか、なぜ双子を連れ出したのか、などの謎めいた彼の言動の真相には心打たれました。

3作のどの題材も読み切りとしてここまで高い完成度で話をまとめられる方はそうそういないのではないでしょうか。
オススメです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-03-09 23:56:42] [修正:2011-03-09 23:56:42]

月別のレビュー表示