「朔太」さんのページ

スポーツ漫画と呼んではいけないと思う不思議な漫画です。

というのも、主人公は恩ある義父のためにビジネスの世界
でも成功者になったり、愛憎を絡めた展開だからです。
これも9秒台で走れば感じる「光の世界」の魅力は
ビジネスの成功以上だと説明するための伏線だった
とも思えます。

スポーツを主題にした少年漫画は、一定の定型があって、
努力しバトルに勝つプロセスをハラハラドキドキで楽しむ
ものですが、この作品ではバトルはありません。
戦う自分もおらず、「光の世界」に取り憑かれた者たちが
描かれているだけです。

「100mを9秒台で走ることのできた人間は、宇宙を
翔べた人間の数よりはるかに少ない。10秒の壁をうち
破ればそれを成し得た人間にしか体験できない、
9秒台の宇宙というものがきっと存在するんだ。」

そして迎える最終話では、一握りの天才たちだけが
感じる世界が表現されます。バトルのないスポーツ
漫画という分野では先駆的作品ですね。
その後の曽田正人の作品にも同じモチーフを感じて
いますので、想像でしかありませんが、少なからず
影響を与えたのかもしれません。

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[投稿:2017-01-30 20:37:53] [修正:2017-01-30 20:37:53]

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