「朔太」さんのページ

10点 巨人の星

何年経っても全編のあらすじが頭に蘇ってくるほど、しっかりと読み込んだ記憶があります。
現在以上にプロ野球の王者巨人軍だった時代がありました。
川上、長嶋、王、堀内が成し遂げたV9時代が背景にあります。
しかし名門巨人軍の影の部分を設定し、復讐をモチーフにする少年誌からぬ不純ぶり。
一方で純粋に野球を追求し続け、才能に恵まれない肉体をいじめに苛め抜く主人公とライバル達。
高校野球編までは、貧乏と常軌を逸した鍛錬ぶりに引き込まれていきますね。

高校野球編が一旦終結し、苦労が実る瞬間があります。
宿敵川上監督が、謝罪とともに背番号16を禅譲してまで巨人軍に勧誘に来る場面では、ここで話を終えても良いのではと思えるぐらい幸福感満載です。

しかし、第二部と言えるプロ野球編において、伝説の大リーグボール1号、2号、3号が炸裂します。
この辺りになると、原作者梶原一騎の天才ぶりも炸裂しています。
ライバルが命を懸けて対抗する、父が親友が大リーガーが敵になる。

何といってもすごいと思うのが、常に登場人物たちに、自身の行動の根拠となるマインドを論理的に整然と語らせるのですよね。
例えば、親友伴忠太や姉明子には星飛雄馬から離れていく理由を、花形にはなぜ命を懸けてまで特訓するのかという気持ちを、左門豊作には花形が羨ましくて仕方ないと吐露させ、オズマにまで飛雄馬は野球ロボットだと語らせます。
登場人物に多くを語らせることで、細やかな人物描写を成功させます。
そして、いずれも真剣で硬派の人間達が頑張れるだけ頑張るお話だから、魅力的なんですね。

私はと言えば、それほど感動して読んだことはないのですが、野球好きもあっていつの間にか体に沁み込んでしまった人生の一冊と言える存在になってしまいました。
やはり不朽の名作と言って良いと思います。


ナイスレビュー: 2

[投稿:2017-10-11 03:32:36] [修正:2017-10-11 03:34:24]

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