「朔太」さんのページ

「あしたのジョー」で一世を風靡したちばてつや氏は、
手塚治虫、石森章太郎、藤子不二雄らと並んで既に巨匠でした。
少年マガジン誌はその後、チャンピオン誌やジャンプ誌に
追随され没落していきますが、サンデー、キングもあった
当時の浮沈空母のような存在です。
その人気誌には、ちばてつやの作品は絶対不可欠で、
この後も「あした天気になあれ」と続いていく中での連載です。

鉄平は、ちば氏が最も得意とする少年像です。
「ハリスの旋風」の石田国松とほとんど同じキャラです。
貧しい生活の生い立ちで乱暴で粗悪、暴力、盗みも嘘も全く
平気ですが、仲間を大切にし弱い者への味方を貫く心優しい一面もあります。
勉強は全くできないがスポーツは万能で、最初は一方的に
負ける相手には、無茶苦茶だが尋常でない訓練で勝つまで精進する。
その後も「あした天気になあれ」の向太陽、「のたり松太郎」
でも共通するところは必ず見られます。

ちば氏の作り出す主人公像は、最初不愉快な面もありますが、
やがて読者の共感を呼び、最後には常に人気者になって支持を得ます。
鉄平はその中でも極端な悪から人気者になった典型的な人物像でした。

人間像が支持されているのではなく、その生きるプロセスを
支持しているような気がします。
今はダメ人間でも、鉄平のようにがむしゃらに目の前のことに
(頑張るとか精進するとかの高い次元でなく)熱くなって
いれば、いずれ勝者になれる、それを温かく見守ってくれて
いる人がいるはず、という将来への希望を感じさせてくれます。

私にとって、少年漫画の代表作とも言える作品でしょう。

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[投稿:2018-01-21 08:03:11] [修正:2018-01-21 08:03:11]

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