「shutaro」さんのページ

「家に帰るまでが修学旅行」とはよく言うが、この漫画も家に帰るまでを
追いかけ、修学旅行の本来の趣旨どおり何かを学ぶ、その過程を描いた漫画。
恐怖へと追い込まれる演出もいいし、そこから狂気へと至る性もよく描けており、
同じく恐怖とそれに支配される人間をテーマにした「漂流教室」の正統な
後釜的傑作となるかと思いきや・・・である。
賛否両論というか否定の方が多いであろうラストにやはり問題がある。
「読者に考えさせる」系の締め方に異論はない。問題はその内容である。
終盤での文字の洪水のおかげで、本来読者が自ら考えるべき「恐怖の正体」や
「狂気に侵される人間の脆さ」といった主題がほとんど語られてしまい、
読者が想像する余地すら残らなかった。特に、あるキャラの説明的すぎるセリフの
せいで、ラストで読者が突き放された後に残るものは、本来作者しか知り得ない
「この後は?」とか「富士山噴火?の原因は?」といったストーリーの
末節部分に対する疑問しかなく、単なる破綻したサバイバル漫画に成り果てた。

読者はそこまでバカではない。セリフでクドクドと説明しなくとも、
意識下無意識下のうちにテーマを感じとり気付くのである。
そしてそこから自ら考えたどり着いた結論こそ、自らのものになるのである。

このままではテーマがはっきり伝わらないのではと考えた結果なのだろうか。
名作といわれるものは、得てして多くを語らないものであるにも関らず。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-11-04 21:37:34] [修正:2005-11-04 21:37:34]