「臼井健士」さんのページ

7点 血の轍

[ネタバレあり]

「惡の華」で知られる押見先生の最新作。
冒頭、母親とおぼしき女性に手を引かれ散歩する幼子。途中で道路に横たわる猫を見付けるのだが・・・・。

場面は変わり、夢が覚めて母親に促されて朝食をとる少年。その朝食が「肉まん」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?
朝食が「肉まん」?平凡な日常の描写の中に違和感のある描写が混じる。
物語の舞台は日本の群馬県。
少年の名は「長部静一(おさべせいいち)」。
生年月日は1981年3月19日。
学年は中学2年生で早生まれだから年齢はまだ13歳。
時代は昭和から平成へと移ってから6年が経過しようとしていた・・・・。
でもそれはそれ。日本の一都市にある平凡な核家族の何処にでもあるような風景のひとつに過ぎない・・・・・はず。

静一には父の兄弟の子供で従兄弟に当たる男の子がいてよく遊びに来ていた。
夏休みに入る前にも毎週のように遊びに来る従兄弟とその母親。
清一と母親は毎週のように歓迎した。
そして、夏休みに双方の家族で山登りに行く。それが悲劇の引き金になるとは誰も思っていなかった。
思っていなかった・・・・・・・・・・・・はず・・・・・。

母親にとって息子とは自分の胎内から出でた異性。
それは親としての範疇を逸脱した愛情を注ぐ存在か?
母親のセリフからは全く母親の真意が汲み取れず、表情や仕草や態度で母親の心情を表すという構成が見事!
1巻では母親の親族は全く登場せず、母親の実家での育成環境は察し難い。
「日常生活で忍び寄る恐怖」は足音さえ立てない。

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[投稿:2021-07-18 22:56:25] [修正:2021-07-18 22:56:25]