「そのばしのぎ」さんのページ

ドストエフスキーやトルストイといえば中・高校生の頃に誰もが読む本であろうが、考えてみると、この当時のロシア文化や時代背景をそのまま自分達と同じ感覚で受け止めて良い物かという疑問は沸く。20年前に資本主義の象徴たるマクドナルドが進出した時も、客は各々に「自分達は平等だったんだ。」とインタビューに答えていた。この辺の思想的な感情は日本人には理解しがたい物がある。

そういった意味で舞台を日本に置き換え、翻案といった形を取ったのは面白い。
獣の刻印を持つ主人公の名前が裁弥勒というのもなかなか洒落ている。
しかしその為か、弥勒はただのひきこもりの中二病になってしまい、感情のままに主人公を殴りつけるエチカも原作のソニャに比べると随分と俗物な印象を受ける。
おまけにただの金貸しの婆さんが暴力団と繋がった少女売春グループのリーダーとなり、悪人度は500%増し。やばい、これではまるでデスノートではないか。

5?6巻位までそういった設定によって進む大筋がかなり微妙な気がした。原作を読むに越した事はないと思うが、それでも手塚治虫の「罪と罰」、大島弓子の「ラスコーリニコフ」あたりとまた違い、別の方向性から原作を語る事に健闘はしていると思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-27 18:14:55] [修正:2010-09-27 18:14:55]