「shun」さんのページ

個人的にかなり気に入っている作品の一つ。
画はあしたのジョー時代よりもかなり落ち着いた様子で、
今見ると古臭さはもちろんあるものの、味のある昭和の書き振り。
そして背景やモブの描写が素晴らしい。
世界観とよくあっている。

主人公のキャラクターはかなり破天荒で、レイプ未遂や土俵での無礼は
人によっては笑えないレベルかもしれない。
主人公としての魅力ははっきり言ってないが、珍獣が何をしでかすか、
どこまで行ってしまうのかを見守る展開になっている。
特に相棒の田中の立ち位置が絶妙で、主人公松太郎の観察者であり、
サポートキャラであり、ライバルキャラにも変貌する。
田中関連のエピソードには何度か泣かされた。

ストーリーははっきり言って退屈。
年間6場所をこなしている力士のバイオリズムは、練習→本場所→巡礼→練習→本場所と
特にそれ以外の起伏を作りにくいことと、作者の作風によって、終始落ち着いて展開していく。
怒涛の展開を求める人には退屈かもしれないが、定点観測しているような、
ベテラン漫画家の落ち着いた話運びに乗せられて、終盤まで見てしまえる。
もちろん昇進に関わる、優勝がかかった場所はきちんと盛り上がるし、
動きの描写もわかりやすく、とても読みやすい。

相撲ということと、ピークの終わった漫画家ということ、
浮き沈みの少ない作品ということで、あまり知れ渡っていないこの作品。
私は何度も読み返すスルメ漫画として、これからも度々読んでいこうと思える作品であった。

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[投稿:2015-04-24 15:49:38] [修正:2016-07-25 11:55:37]