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「こういうふうにしか生きられない」ということの絶望が、古谷実という作家のテーマなのではないかと思っている。
育った環境も幼少期のトラウマも関係なくて、「決まってしまっている」ことは、あるのだ、と。
(余談だが、映画版は、この文脈を逸れてしまったのが、個人的には残念だった。映画の出来はよかったけれど。)
なぜ、そうなってしまうのか。
例えば、人殺しに。
そこに理由がある人もいる。
でも、それが理由なき必然である人もいる。
じゃあ、どうすればいい?
どうしようもない。
だから、絶望なのであって。
そのテーマを「こちら側」から描いたのが「ヒミズ」で、「あちら側」から描いたのが、「ヒメアノ?ル」なのだと思う。
この人の作品は「焼き直し」とよく言われる。
そうかもしれない。
けれど、裏を返せば、古谷実という人は、何度も同じテーマに向き合っている、ということでもあるのではないか。
その姿勢が、僕は嫌いではない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2017-06-25 23:26:59] [修正:2017-06-25 23:26:59]

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