「nur_wer_die_sehnsucht」さんのページ

手塚治虫だけど、あの人は漫画を描くことが目的だった人間じゃないんだよ。あれは漫画家ではないの。だから自分の描かざるを得ないものを為した、という人物ではないんだ。こう言うと反論もあるだろうけどな。
手塚治虫は漫画というものの進化をしたかった人間なんだよ。それまで子供騙しの絵本以下だった漫画というものを、人生に有用な芸術に近づけることを期したんだよな。
そのためにテレビという新しく今後のメディアの中心となるものへ漫画を投下したわけ。
また漫画というものが、こういうことも描けるのだということを訴え続けたんだ。

人間というのは中心軸が変わればまったく違う動きになって行くものなんだよ。
自分の漫画を描こうと思えば、手塚のような真似は絶対に出来ないわけ。でも手塚のような目的になると、ガンガン量産できるんだよ。
大体毎日10ページくらいは描いていたんじゃないか? でも漫画家にはそれは不可能なことは分かるだろう。
でも漫画の地位向上のために動くと、今度はそれを成し遂げる算段が出てくるんだよ。漫画自体の描き方ももちろんそうだし、優秀なスタッフを揃える、ということもそう。私は一人で仕上げていたとはまったく考えてないよ。まあ詳しく検証したわけではないけどな。
だから代表作は幾つかあっても、全部が素晴らしいわけではないだろ? キャラだって使い回しが多いじゃない。

でも中心軸からすれば、それでいいということなんだよ。
ああ、手塚は医者であったことは無いからな(笑)。医師免許を持っている、というだけ。それもあの時代の混乱から手に入れたようなもので、博士論文だってたしかそうだよ(笑)。
もちろん真面目にやっていた人だから医学的な素養は人一倍あるよ。でも『ブラックジャック』なんかは医者であれば絶対に描かないようなこともたまにやってるから(笑)。
でも、それも「漫画の地位向上」という目的の上にあるわけだから、それでいいんだよ。
人生は中心軸次第なのな。

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[投稿:2019-01-18 10:28:07] [修正:2019-01-20 14:59:22]