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7点 編集王

まだ漫画週刊誌が爆発的部数を売り上げていた90年代を舞台に、青年漫画週刊誌編集の現実的?な一面を描いた職業マンガ。

本作品のテーマは、基本的に、売上至上主義の編集者VS作家性追求型漫画家という対立。勿論この問に解はなく、その相克と止揚の中で珠玉の漫画は生み出されるのであろうが、そのプロセスこそが面白いと訴えたのがこの漫画だ。一見、前者視点の冷酷な漫画編集=このどうしようもない腐敗した現実、という作品に思われるが、登場人物は結局もれなく「熱さ」を抱くようになっているあたり、含蓄がある。現実路線の権化として登場した三京、明治、編集長、社長は最後には結局、主人公サイドに理解を示す「いいやつ」になっている。また、現実でも、90年代にマーケティングの結果売れていた漫画(バブル漫画)は今や全く読まれていない。魂入れて描かれたマンガのみが今も読み継がれている。

漫画家マンガが増えすぎた昨今、現実的に編集者視点から漫画制作にスポットライトを当てた本作は益々その価値を高めているようにも思える。漫画家が自らの職業について描くのは容易だが、敵でも味方でもある編集者を人間臭く生き生きと描くことはさほど容易ではないのだろう。作者の死が残念でならない。

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[投稿:2013-04-28 00:09:01] [修正:2013-04-28 00:12:20]