「まれら」さんのページ

ネタとしてはねじ式やゲンセンカンの方が有名かも知れない。映画化された点を除けば実に地味な作品。
作品終盤で語られる井月は、安政年間から明治半ばまで伊那谷を漂泊し、芭蕉や西行にあこがれたまま野垂れ死んだ。やがて昭和の世には、山頭火もまた伊那谷を訪れる。漂泊の人は漂泊の人にあこがれ、彷徨い続けるのが宿命なのだろう。つげ氏もまた同じなのかも知れない。
井月の話が淡々と語られ、それまでの作中の喧噪が浄化されてゆく。陰鬱な話の筈なのに、なぜか清々しい結末。井月の辞世の句で締めくくられた後は、自分もまた無能の人にあこがれる穏やかな読後感。
つげ作品の頂点と感じた。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-11-20 00:40:31] [修正:2007-11-20 00:40:31]