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8.4点(レビュー数:5人)

作者水樹和佳子

巻数15巻 (完結)

連載誌ぶ〜け:1986年~ / 集英社

更新時刻 2010-08-11 00:03:11

あらすじ 舞台は1万2千年前の古代日本、真言告(言霊)の概念が存在する世界。

目に見えぬ神を信仰する世界、ある村の少年鷹野(たかや)はある日捨て子を拾う。赤子は透祜(とおこ)と名付けられ、鷹野の妹として育てられた。
7年後、透祜が育った村は目に見える神、威神の徒党に襲われる。生き延びた透祜と鷹野、彼等の兄のような存在の青比古(あおひこ)は目に見える神、亞神(あしん)の信徒に助けられる。

目に見えぬ神々、目に見える神(平和を尊ぶ亞神、争いを好む威神)とその信徒の戦いを描く。

備考 星雲賞第31回2000年度コミック部門受賞。
手塚治虫文化賞第4回2000年度最終選考(47点)。

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この漫画のレビュー

8点 ジブリ好き!さん

凄い。

物語は全てラストのために描かれるのだが、その過程も丁寧で面白く仕上げられている。
そして迎える激動のラスト…

似たラストの作品を挙げるなら、古くは「ナウシカ」や「地球へ…」など。
最近のSFやセカイ系にも似たようなものが挙げられる(というか最近のものはこれらの影響を受けているので当然っすよね)。
なので作品の古さを特別視しないならば、単に「SFらしいラスト」で括られてしまうかも。だが、この作品の凄さはそこ(だけ)じゃない。
神のデザイン、表現の素晴らしさ・美しさ、敵味方問わず魅力的なキャラの数々…それらも備品にすぎない。

この作品の凄さ、それは物語を通して導き出されたその「結論」
‐神は「必要とされない」存在になったこと‐

宗教や信仰をテーマに入れながら、結果的に神は必要ないと結論付けてしまった!神殺しの作品はあれど、神を捨てる作品はそうそうないだろう。
ましてこれほどのクオリティと説得力をもってそれを描いた作品はこれ以外ない!まさに、今となっては宗教への関心薄く、特定の宗派に属さない人の多い日本だからこそ許された結論だ(欧米やイスラム圏じゃ…)。

救いは人それぞれ異なり、それは時に善であり、時に悪である。永遠の平穏が約束された理想郷では決して癒せぬ傷もある。
善だけが、悪だけが人の姿なのではない。人間とは「進化する反調和」だ!

こうした結論がかなりの説得力をもって描かれていることが凄い。
善なる透祜と殺戮に快楽を感じてきた夭祜が一つになるシーン
平和を尊ぶ亞神の味方をしてきた鷹野が、平和の楽園を築いた亞神の天音を斬り消すシーン
決して剣を取らなかった青比古が、一狼太を殺すことで救うシーン
敵も味方も誰も彼もが血にまみれ辿りついた結論。

凄い。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-08-11 00:03:55] [修正:2010-08-18 15:26:35]

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